社畜、武器をオーダーメイドする
「さて、何処がいいかな……」
俺はダンジョン付近をぶらぶら歩きながらそう呟いた。
武器を買うにしてもやはり安心できる品質がいい。
そりゃあ、そうだろう。
武器ということはそれに自分の命を預けるということだ。
モンスターの攻撃を受けて武器が折れてTHE ENDなんてたまったもんじゃない。
とは言ってもそもそもの店を選ばなきゃ話にならない。
探し始めてから早10分。
スマホで検索したがダンジョン近くなだけあって何処も評価が高い。
「どうすっかな〜」
はっきり言ってお手上げ状態だった。
何処か適当な店に入って武器を買うか……そう思った時だった。
「ん? なんだあれ……」
ふと横を見た時、薄暗い道の奥に店らしきものがあったのだ。
あれ? あんな店スマホに載ってたっけ……
そう思ってスマホで確認してみたが載っていなかった。
なんたんだ? あれ
怪しい……
俺は思ったがそれ以上の気持ちがあった。
「でも、なんか惹かれる! よし、行こう!」
気になるなら行ってみようじゃないか。
今の俺には俺を止めるものは何もない!
行ってみたいところには行ってみよう。
幸い金ならあるからな。
ここは……武器屋か?
店の前のガラスケースにはロングソードや短剣なんかもあるし間違いないな。
それにしてもこんなところに武器屋か……客は来るのか?
まあいい。
外見なんかよりも重視すべきは武器の性能だ。
それではいざ突入!
「お邪魔しまーす……」
ガラガラっと、引き戸を開けて俺は店に入った。
ほぉ、中は意外と現代風なんだな。
もっと古めかしいものだと思ってた。
「おう、客か……らっしゃい」
そう言って現れたのは筋骨隆々の渋い男だった。
うぉぉぉ! すげ〜!
いかにも職人って感じがする。
「ここはダンジョン用の武器を作ってるんですか?」
「ああ、見ての通りだ」
よし、それじゃあ
「武器を作ってもらえませんか?」
「ダメだ」
「えぇ! 即答!?」
嘘だろ! おい!
いきなり断られたんだけど!?
「あ、あの〜? なんでですか?」
「あぁ? 強い武器を作るなんて依頼は何度も受けた。そしてそいつらは次々と死んでいった……俺は俺の使った武器で人が死ぬのが許せねぇんだよ……」
「……」
そう言われちゃあ何もできないな。
……いや? 待てよ?
今〝強い武器〟っていったか?
「ああ、だったら作ってくれ」
俺の言葉を聞いて男の人改めておっちゃんは驚いたように言った。
「はぁ? 話聞いてたのか坊主! 強い武器は作らなーー」
「強い武器なんかいらない」
そう、強い武器なんていらないんだ。
いくら強い武器を手に入れたってそれをうまく操ることができなければただの足手纏いになる。
「俺が求めているのは俺の身の丈にあった武器。使いこなせない強い武器なんていらない!」
「……」
そこまでいうと、おっちゃんは黙った。
これは……大丈夫か?
もしかして武器を作ってもらえなかったり……
「ふふふっ、ふはははははっ!」
「!?」
えっ、なに?
どうして急に笑った!?
やばいもしかして俺おかしな人にあったのか……?
そう思ったがどうやらそうではなさそうだ。
「いいな! 坊主! 気に入った! いやー今まできた奴らは全員『強い武器をくれ』の一点張りでな……身の丈に合わないと危ないと言ったらふざけるな! といって帰っていってしまったからな!」
「あっ、あはは……」
おっちゃんはそう笑いながら俺の肩を叩いてきた。
うん、痛い、痛いっておっちゃん!
でも、武器を作ってもらうことはできそうだ。
よかった……武器を作ってもらえなければどうしようと思ってたからな。
「それで……武器を作ってくれるのか?」
「あぁ! もちろんだ。ただしーー」
「身の丈に合う……だな」
「がははっ! その通りだ!」
一通りおっちゃんは笑うと仕事の顔になった。
それに連れられ、俺も真面目にしようと考えた。
「さてと、お前さんはどういった武器が欲しいんだ?」
きた! 交渉の時間だ。
俺が現在欲しい武器……か
俺の戦闘スタイルは相手の攻撃を避けてからのカウンターだ。
だとしたらロングソードや刀といった長物を使うのは良くないな。
だとしたら……
「短剣だ……丈夫で鋭い短剣が欲しい」
「ほう……耐久性があり、攻撃力もある短剣か……結構ハードだな」
「できないのか?」
俺が挑発するようにおっちゃんに聞くとニヤリと笑ってこう答えた。
「ふっ! 任せろ! こんななりでも昔は『神匠』と呼ばれていた男だからな!」
よし! そうこなくちゃ!
こんな職人、そうそういないぞ。
これは期待できそうだ。
「それで? 肝心な値段はどうなんだ?」
「値段か……今回の要望に応えるには鉄の数十倍の耐久性を持ち、それでいて鉄よりも軽い〝オリハルコン〟を使う必要がある」
おい! しれっとすごいこと言ってるぞ!?
鉄の数十倍の耐久性に軽い……
そんなの最高の素材じゃないか!
でもそんな素材だと高くつきそうだな。
一応金は5000万までなら出せるんだが……大丈夫だろうか。
おっちゃんは〝よし!〟と言ったような顔をして、俺に向き合った。
「そうだな素材の値段が高いからな……大体5000万くらいだろうな……」
「ふぅ、よかった」
「ん? よかった? どういうことだ?」
「あぁ、俺の予算範囲がちょうど5000万だったんだ」
「なんだと!?」
あっ、驚いてる。
まぁ、そりゃそうか。
こんないかにも平民な俺が5000万を予算だと言ったんだからな。
「本当だ。これを見てくれ」
俺はそう言いながらおっちゃんにアプリを開いて通帳を見せた。
「いっ、1000万だと!?」
「あぁ、さらにここに書いてあるようにこれは前金だ。これが後4回支払われる……つまり5000万ちょうどになるわけだ。まぁ、+で150万もあるけど」
そういうと、おっちゃんは俺に聞いてきた。
「お前、一体何者なんだ……?」
うん、やっぱり気になるよね。
まあ、教えるんだけど。
「最近、ダンジョンで話題になってるやつがいないか?」
「あっ、ああ。SS級のモンスターをフルボッコにしているやつがいるとか……まさか!」
おっちゃんは気づいたようで俺に指をさしてそう聞いてきた。
ダメだよおっちゃん。
人に指をさしちゃ……
「その通りだ」
事実なんだがな。
「うおっ、マジかよ……やけに性能が高いと思ったがそういうことなら納得だ」
「あっ、一応これ証拠な」
そう言って俺はアプリに書いてあるプロフィールのようなものを見せた。
すると『本当だ……』というような顔をしていた。
どうやら納得してくれたようだ。
ふぅ、よかった。
「それじゃあお願いするよ」
「おう、任せとけ。できるのは大体1週間後くらいだ」
「わかった。あっ、そういえば名前はなんでいうんだ?」
「おっ、言ってなかったか。俺の名前はゴードだ。お前は?」
名前か……
これは本名を言った方がいいのか?
いや、ここはカッコつけたいな。
「俺は……ストだ」
「そうか、スト、よろしくな!」
「おう!」
そう言って俺とゴードは握手をした。
「じゃあ、1週間後に来るから」
「任せとけ! それまでに仕上げといてやるよ!」
そして俺は店から出た。
よし! これで武器の方は大丈夫だな。
……そういえば途中からタメ口になってたな。
失礼だったか?
いや、普通に接してたし大丈夫か。
「俺の武器……楽しみだな」
そう呟きながら俺は配信するためにダンジョンに向かった。
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