第18話 体の異変、心の異変

暫く妻は入院をする。具体的にどのような治療をしているのかは分からない。携帯は持てた為毎日連絡は来ていた。今日はハンバーグだったよ、今日は心理士さんとお話ししたよなどと些細な内容ではあるがどのよつな1日を過ごしたのか報告が来ていた。また「暇だから本でも買ってきてほしいな」と希望があり妻は元々小説が好きだったこともあり本屋さんで新作を何冊か購入し毎回渡していた。面会時の妻は来た時は嬉しそうだが帰る時はいつも泣きそうな顔をしていた。「大丈夫。次の休みも来るからね」と約束をし帰宅する。その病院から電車を乗り継ぐと一時間片道かかるができる限りは行こうと決めていた。


しばらくすると体に異変が起きてきた。やたらお腹が痛く食欲も出ない。口にするのはコーヒーか果物。とてもじゃないが炭水化物やお肉などは食べられなかった。それと同時に夜が眠りにくくなり寝付けたと思ったらアラームが鳴る日も増えた。眠れない日はお酒を飲んで眠る日も増えてきた。


暫くするとわたしは職場で倒れてしまっていた。消化器内科の医師に診てもらうと十二指腸潰瘍であった。医師に最近の食生活やストレスなど聞かれたが少しお酒が増えてきた事だけ伝える。他の「ストレス因子」は伏せて話した。

そもそもわたしの妻が入院している事は職場の上司や部長など限られた人しか知らなかった、まして妻が精神疾患で入院しているなど、当時のわたしは周りに知られるのが怖く、話せなかった。産業医の先生にはある程度本当の事を話し、睡眠薬、抗不安薬、胃の薬など処方してもらいなんとか乗り切った。


勿論妻には倒れたことなどは話していない。今でもおそらく知らないであろう。知ることで精神的に負荷がかかる事は分かっていたし、治療の妨げになるかもしれないと全て隠して働き、通院し、妻の病院はお見舞いに行っていた。

暫くすると妻から「痩せたね、ご飯食べてる」と心配をされるようになった。元々ぽっちゃりとしていたわたしだが鏡を見ると頬がこけてきたように思えた。体重を測ってみると3週間で9キロも痩せてしまっていた。

妻には「最近お酒ばかり飲んであんまり食べてないなー。やっぱり君が作ってくれたご飯が美味しいからね」とできる限りの強がりをしてみせた。妻は「早く作れるように元気にならないとね」と笑ってみせる。


家に着くとお風呂だけすまし明日の仕事のチェックをする。薬を飲み布団に入る。夜になると胸が苦しくなる。お腹が痛くなる。起きてウィスキーを流し込むように飲む。すると薬と合わさるのか眠くなるような気がする。そうやって眠りにつくことが増えてきた。

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