第17話 残酷な現実的と向き合う努力

初めに結論から述べると妻は浮気をしていた、一連の騒動はそれによるものだった。それらをそのまま述べようと思う。


妻の携帯にLINEが入っていた。ロックナンバーが掛かっているが妻がLINEを開く時の指の動き方でなんとなく把握はしていた。わたしはやましいことは何も無かったが自分が見られたら嫌なので妻の携帯も勝手に見ることはなかった。今回ばかりは何か嫌な予感がし、開く事にした。

妻はある男性とやり取りをしていた。わたしはその男性に心当たりがあった。学生時代の友人と遊んだ時に一緒に居た人間だ、やり取りを見ていると辛くなってくるので暫くすると見るのをやめる事にした。体の関係も持っていて、頻回に会っていた事、別れ話のもつれから今回の騒動に発展した事。知りたくなかったが見てしまったが最後、色々な情報が目から飛び込んでくる。その日のことはよく覚えていない。ただその男を呼び出し泣くまで殴ったことは覚えている。そしてその男にすべてを話し落とし前の付け所まで話したのだろう。顔を見るのも嫌であったが何度かその男と今後も会うことになる。


問題は妻の方だ。わたしの頭の中には勿論「離婚」の文字がよぎった。しかし、今の状況で妻を見捨てるとそれこそ死んでしまうかもしれない、それは避けたいと思う気持ちと、こんな事になりながら妻を愛する気持ちが残っている自分が分からなかった。一旦今回の事は妻には隠しておこう、暫くしてから話そうかと思っていた。


後日面会に行った際に携帯電話も妻に渡した。暇であろうから携帯で時間を潰してと話そうと思うと妻から「全部知ってるよね、ごめんなさい。わたしから弁明する事は何もないです。貴方を裏切った事には変わりはないので。どんな事を言われてもわたしは受け入れます。」と話した。

「なら、退院した後も昔のように一緒に過ごしてくれる?今回の事は何も言わないから、」


自然とわたしは妻を受け入れる方向で話をしていた。妻は泣いていた。何度もごめんなさいと繰り返し繰り返し。心配した看護師さんが来たくらい人目も憚らず泣いていた。そんな妻を見ていると胸が苦しくなり、お義母さんには俺から誤魔化しておくから。と妻に伝える。

少し安心した顔を浮かべ、わたしが昼食をしに外に出ている間に寝てしまっていた。看護師さんが言うには、夫に見捨てられないかと夜になると泣いていたようで眠れていないようであるとの事だった。その日は起こさないように妻の携帯にメッセージを残して帰ることにした。


この日のわたしの行動、正しかったのか間違いだったのかは今でも分からない。ただ、一度狂い出したハグルマは急には元に戻らない。

その日からわたしは夜になると胸が苦しくて眠れなくなるようになった。「今度心療内科に行って睡眠薬でも貰おうかな」と考えていた。

わたしの体に徐々に精神疾患の波が迫って来ている事を当時は知る由もなかった。

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