第15話 自殺未遂
わたしは緊急搬送された妻を救急外来の待合室で待っていた。夜も老けて来ており当然中は真っ暗。非常灯が廊下を薄暗く照らしている。
わたしはその日夜勤であったが妻がこう言った状態である為職場にしばらく休みを貰いたいとの電話を入れていた。専務から「とりあえず落ち着いて、電話越しにでも焦っているのは伝わるから、奥さんが気がつくまで休んでもらって構わないからね」と職場からは休む許可を貰えたが待合スペースでじっとしていられなかった。当時は敷地内に喫煙所がある所もあり喫煙所と待合を行き来していた。落ち着く為にコーヒーを何杯も飲んだ、いっこうに落ち着く事ができない。そのまま数時間が経過し看護師がわたしの前に現れた。「診察室で先生がお待ちです」との事。わたしは震える手を抑え診察室へ向かった。
「奥様はカルバマゼピン中毒、アスピリン中毒になっています。近くにお薬のヒートシールは落ちてませんでしたか?」との事であった。
救急車が来る数分前、横たわる妻の横に薬を入れているフィルム「ヒートシール」がかなりの量落ちていた。わたしは子どもの頃から側頭葉てんかんとアレルギーを持っていた。発作が起きなくても継続的に服薬を行っていたがその薬を妻が大量に服薬してしまったのは一目瞭然であった。
わたしは医師に「わたしが普段服薬している物です、それを妻は飲んだんだと思います」と説明をした。医師に管理体制や過去に過量服薬の経緯があったかなど聞かれたが妻からは特に何も聞いていない為正直に聞いたままを答えた。今は意識はないが一命は取り留めたが暫くは点滴などによる治療が必要な事、精神状態によっては精神科へ転院が必要なことを聞いた。その日は帰って入院の用意などをしていた。一晩起きていた為数時間でも仮眠しようかと思ったが色々頭の中がごちゃごちゃになって眠れなかった。そのままその日は入院の手続きをし限度額の申請を行った。わたしはその足で「義母」の元へと足を運ぶ。大事な娘さんを預かっている立場だがこのような状況になってしまったことを説明する義務がある。幸いにも連絡先は聞いていた為簡単に理由を説明し、近くの喫茶店で待ち合わせをした。そこで義母から出てくる言葉はわたしが考えていた事を凌駕してきた。
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