第14話 裏切りと真実

晴れて私達二人は夫婦となった。なんてことはない普通の幸せ、それだけを望んでいた。結婚は私たちの中で一つの限りではあるが通過点でもある。この後に沢山の出来事が待っているかもしれないと内心思っていた。


結婚届を役所に出し記念撮影。役所にあるパネルで結婚記念日を彼女、いや今後は妻と記すことにしよう。妻と細やかな喜びを分かち合った。特に日常に変化が訪れる訳ではない、いつもの日々、変わらない日常。ただ、妻の指にはわたしがプレゼントした婚約指輪、妻は職場でも料理中も外すことはなかった、「わたし、よくもの無くすから、大切な物だから肌見離さないね」と喜んでいた。その顔を見る事が何よりの幸せだった。


その後新婚旅行や結婚式のことについてなど妻と色々相談をした。悔いの残らないよう多少お金はかかってもよい、そのくらいの気持ちで一生の思い出を作りたい。そう考えていた。


数ヶ月経ったある日、わたしは何故か妻の行動に不信感を抱くようになった。わたしの思い過ごしかもしれないが普段より帰りが遅い事が多くなった。夜勤もしていたが夜中にわたしが家を出る頃に帰ってくる事も出てくるようになった。「まさかな、」と自分に言い聞かせモヤモヤする気持ちを抑えながら仕事へゆく。しかし集中できるはずもなく妻の顔が頭に浮かぶ。嫌な考えをしてしまう自分に腹が立ち時にはイライラが限界まで達し、パチンコに行く事も増えてきた。


昔からわたしの勘は嫌な方には当たる事が多かった。先生や母親に怒られる時は前もって空気を察し、胸がドキドキとする。そう言った時は必ず何か嫌な事が起きると決まっていた。それは今現在も同じように起きていた。頼むから俺の思い過ごしであってくれ、と毎日願っていた。

その思いとは裏腹に妻の行動はおかしくなっていった。わたしが夜中まで何処に言ってるのか問い詰めると普段は猜疑心を持たれたことに不満を出すはずが、聞いてもいないのに色々話すようになった。その時のわたしには「嘘」としか思えない。


「嘘」か「真実」か分かる日が来てしまった。

それは突如として現れ、私に非情な事実を告げることとなった。

ある日仕事から帰ると部屋が真っ暗でカーテンも閉め切っている、「また出かけているのか」とため息をつきながらマンションの鍵を取り出そうとすると鍵が閉まっていない事に気がついた。「ただいまー」と声を出してみるが返事がない。その瞬間冷や汗が頬を伝う、寝室の扉を開けると床に妻が倒れ込んでいる。嘔吐、失禁、微かに声は出るが呂律が回っておらず理解ができない。

急いで救急車を呼ぶ。

そこでわたしは見たくない、いや、見てしまう事になる。それは今後の二人の生活を大きく変えてしまう出来事となる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る