第8話 ハグルマ
全話で述べた通り義母の承諾を得て新たな家に住むことになった。当時は学生であったがお互い就職が決まっており収入見込みなど提出した為入居はスムーズに行えた。
四月某日、私たち二人は互いに違う病院へ就職した。今までは同じ学校で登校も下校も同じ、家での生活も殆ど一緒に過ごしていた為「これからは離れ離れだね、なんだか寂しいね」と彼女が言うように私も生活スタイルが変わることに不安を感じていた。
新入社員といっても初めからバリバリ仕事をする訳ではなくまずは新人研修からだ。同期の職員たちとグループワークをしたり、職場の部署見学や社員食堂の使い方、また専門職であるため技術研修などが一ヶ月程度続いた。はじめはやる気に満ち溢れていたが変わり映えのない日々にややマンネリを覚えていた。それは二人の生活にも現れた。研修自体は同じ内容かもしれないが別々の病院、始まりも終わりもバラバラ、どちらが先に家に着くかなんてその日にならないと分からないため二人が同じように二人分のお弁当を買ってしまっていて笑ってしまうこともあった。今まではそれだけ連絡をとらなくてもよかったという事であり、今後は連絡を小まめに取らないと、という建前と、彼女の機嫌を損ねないようにとの思いが強くなっていった。
私は人間付き合いをよく「ハグルマ」として考えている。うまく噛み合えばハグルマは回り続けていくが一度狂うと直すのに時間を要する。
つまり、彼女との「円滑に周るハグルマ」を意識するようになったが、意識するだけではダメだと少しづつ思い知っていく事になる。
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