第6話 初めての通院の付き添い、芽生えた不信
私は彼女の通院に付き添うことになった。いや、私から志願したのだからその表現は正しくないのかもしれないが月に1回から2回のペースで心療内科への通院を同伴した。
医師は家族ではなく交際者の同伴に驚いていたが彼女の主観的な意見と、私からの客観的な意見の両方が聞けることでより治療が円滑に進むかもしれないと話していた。実際に薬を服用した彼女の意見と、その後の経過を見ていた私の意見では多少の食い違いこそあるものの合う、合わないの判断が出来やすいとの事で彼女にしても比較的体に合う薬を選択できていたと話していた。しかし、私は一つ疑問を感じる。
「医者の前だと普段の彼女と違う」
些細な事かもしれないが声のトーンや口調、元々話を順序立てて話す事が得意な彼女であったが医師の前だと何故かしどろもどろになっている。勿論緊張や医師の前に立つと話す内容が飛んでしまうなど考えられるがそれにしてもあからさま過ぎるように私は思う。しかし、それを指摘するといわゆる「地雷」を踏むことになるとは理解していた。
いつも受診後は彼女の調子は良かった。処方箋を受け取り薬局で薬を受け取る。道中も「あそこのカフェに寄って帰りたい!」「久しぶりに映画でも行こうよ」などと活動的になる。とても嬉しいことではあるが、どうしても受診時の彼女の様子とその後の様子に変化がありすぎる為否が応でも悪いことを考えてしまう。
しかし、彼女に直接話す事はないだろう。話す事で症状が悪くなる事も考えられるし、何より私自身が嫌われたくない気持ちがあった。
今日も思いを押し殺し、彼女の顔色を伺い1日を終える。
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