第30話:甘口カレーをもう一度
日本のカレールーの売上トップは、ハウスのバーモントカレーらしい。同社のラインナップの中でも特に甘口であり、パッケージ裏に書いてある辛さレベルを参考にする限り、バーモントカレーの辛口とジャワカレーの甘口、こくまろカレーの中辛が同レベルのようだ。小さい子供のいる家庭では特に人気が高いだろう。
しかし私は思うのだ。一人暮らしまたは子供のいない夫婦やカップル、あるいは子持ち家庭でも子供が中学生以上になってから、「甘口」のカレーを作ったり食べたりしたことはあるだろうか(ここでの「甘口」の定義は、ハウス食品の辛さレベル5段階の下から2つ目まで、つまりバーモントの中辛以下・こくまろカレーの甘口とでもしておこう)。
特に、カレーを積極的に自分で作る人。ルーをアレンジしたりスパイスから作ったり、あるいはタイカレーなどに手を出すような層は辛いもの好きが多いだろうから、なおさら甘口カレーなんて見向きもしない(せいぜい親戚や友人宅でごちそうになる機会があるくらい)人も少なくないような印象である。
私も、そのような辛党(余談だが、「辛党」を「(酒好きとは無関係に)辛いもの好き」の意味で使うのは、誤用とみなされがちだが正しい用法なので覚えておこう)の一人であるが、最近は徐々に甘口のカレーを見直しつつある。
きっかけは、「辛ラーメンなどの韓国ラーメンにカレールーを入れる」という食べ方を知ってからである。作り方は簡単で、普通にスープやかやくを入れてラーメンを煮込んでから(念のため解説するが、韓国ラーメンは先にスープをお湯に溶いてから麺を入れるのが基本)、最後の1分くらいでカレールーを1かけ入れて溶かすだけである(好みでスープ粉末の量を減らして味を調整したり、仕上げにヨーグルトやチーズなどを加えてマイルドにしてもよいだろう)。
カレールーの辛さや銘柄はそれこそ自由なのだが、韓国ラーメン自体がかなり辛いので、ここは辛くないカレーを使うほうがバランスがとれるだろう。実際、韓国では日本式のカレーが普及しているが、日本でいうところの甘口が人気だという。意外にもカレーに関しては、韓国であるにも関わらず辛いものが受けないらしいのだ。
ここでの甘口カレーの利点は「カレーなのに辛くない」ことであり、つまり「カレー以外の辛いものと組み合わせやすい」ことだ。辛くないからこそ辛いものが合う、まさに逆転の発想だ。これなら辛党の諸氏でも甘口カレーを気に入っていただけるに違いない。
まず私が思いついたのはタイカレーだ。業務スーパーなどで売っているタイカレーペースト、これを甘口のカレールーと組み合わせてみてはどうか。辛ラーメンに1かけ分使って3かけだけ残っているカレールーがあったので、そこに大さじ1杯のレッドカレーペーストを加え、あとは通常通り(ルー1パック=4かけ分の分量で)カレーを作る。仕上げにタイカレーっぽく、ヨーグルト(本来はココナッツミルクだろうが)でクリーミーさを加える。
これが予想以上に美味かった。まず味の面でも異なる個性を補っている。食感も同様。市販のルーはとろみが強すぎる一方で、まったくとろみのないタイカレーにやや物足りなさを感じることもあるので、ブレンドすることで絶妙な加減となるのだ。
今回はルー:ペーストを3:1の割合で作ったが、4:1(つまりルー1パックにペースト大さじ1)でもいいだろうし、あるいは1:1でもいいだろう。またレッドカレーに限らず、イエローカレーやマッサマンカレーも合うだろう。グリーンカレーはやや微妙かも知れないが……。
ともかく、「激辛食品+甘口カレー」という組み合わせにはまだまだ可能性が秘められていると思う。今後も積極的に挑戦していきたい。
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