第11話:手作りカレーと市販のルー

 カレールーという存在があまりにも便利なせいで、「ルーを使わずにカレーが作れる」と言うとそれだけでアピールポイントになったりする。まして「カレー粉すら使わずに単独のスパイスのみを組み合わせてカレーを作れる」などと発言するとドン引きすらされかねないので相手を選ぶ必要があると感じる今日このごろである。


 確かにカレールーは便利だが、脂肪分と小麦粉を使いすぎなのでレシピ通りに使うとやや重い。すぐに食べきるのならまだしも、一晩寝かせたりするとかなりしつこくなる。また、味付けも濃いというか隠し味全部入りみたいな感じになっており、ユーザー側で工夫できる余地が少ない(逆に言えば失敗しようがないとも)。


 自炊派は料理という行為そのものにエンターテイメント性を見出しているという意見を見たことがあるが、まさにその通りで、出来合いのルーのみから作るカレーはあまり面白くないというのが正直な感想である。


 私が初めてルーなしで作り、今でも一番よく作るのはキーマカレーである。まず玉ねぎをみじん切りにしてレンジにかけ、塩を振ったら軽く色が付くまで炒める。次にひき肉とスパイス(だいたいカレー粉だけだが)を入れる。仕上げにケチャップとヨーグルトを少し加えて軽く煮込めば完成。材料は目分量で構わないが、塩分の総量だけはしっかり意識しておきたい(1皿分で2グラム程度)。


 日本式(厳密にはイギリス式らしいが)の煮込みカレーもできる。まず人参や玉ねぎをレンジにかける。この時、ラップをせずに人参は下、玉ねぎは上にするのがコツ。玉ねぎは水分を飛ばし、逆に人参は軽く蒸す状態にする。次に肉と野菜を炒める。水を入れて煮込み、野菜が柔らかくなったらコンソメなどのスープの素を投入。最後にカレー粉・小麦粉・バターを同量ずつくらい練り合わせ、少々の煮汁で溶いて即席のルーを作ってよく溶かしていく。


 なお、この簡易ルーの作り方を覚えておくと、ポトフや鍋物などをカレーとしてリメイクする時にも大いに役に立つ。はまぐりなどの潮汁を使う場合も同様だ。味のついたスープに市販のルーを入れると塩気が強くなりすぎてしまう(世の中には無塩のカレールーというのもあるらしいが見たことはない)。


 また市販のルーを使う場合でも、ちょっと足りない時などに自分で作れるようにしておくと便利である。カレーに限らず中華料理の素などでもそうなのだが、普段は既成品を使う前提であっても、本来の作り方を知っていれば味を調整できるようになるし、分量が半端に増える場合でも対応することができる。要は、足りない分を自家製の「素」で補うという発想だ。


 カレーなどを基本的な材料から作るのは、思っていたよりもずっと簡単だった。手間がかかるから、失敗するかも知れないから等の理由で敬遠している方も、一度は試していただきたいものである。

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