第10話:得意料理は麻婆豆腐

 「得意料理」は何かと人に聞かれたら。私はとりあえず「麻婆豆腐」と答えることにしている。ひき肉と豆腐さえ用意すれば、あとは常備している調味料だけで作ることができる。


 本来のレシピでは豆板醤などを使うところだろうが、私は日本の味噌を使う。いや、豆板醤でも作れるのだが常備する習慣がないので、普段は味噌で作るというだけの話だ。


 まずひき肉を炒める。これも本場のレシピでは牛肉なのだが、私はだいたい豚肉、たまに鶏肉である。一度に使うのはだいたい100グラム程度(他のおかず次第だが、2~3人前)。胡椒を振って、おろしにんにく・しょうがも加えて火が通るまで炒める。辛いのがいけるならみじん切りにした唐辛子や花椒(私はホールで買ってペッパーミルで都度挽いている)も加えたいところだが、このあたりは家族の好みで省いたりもする。


 肉が炒まったら味付けである。だいたい、味噌とみりんを大さじ1杯ほど入れて、肉全体によく馴染ませていく。そこに水を1カップほど入れ、味の素か中華スープの素を少々溶かす。さいの目に切った豆腐(可能なら、あらかじめキッチンペーパーにくるんで重石を乗せるなどして水切りしておくこと)を入れて軽く煮立て、味見をして好みで醤油やオイスターソースを少し加えて、仕上げに水溶き片栗粉を回し入れ、ラー油を垂らして完成! 実に簡単である。


(なお、味見をして唾液がついたスプーンなどを鍋に突っ込まないようにしよう。衛生面はもちろんのこと、唾液の酵素によって、せっかくのトロみがシャバシャバになってしまう)


 世の中には「麻婆豆腐の素」がなければ作れないという人も多い。あれはあれで優れた商品なのだが、コストや汎用性も考慮するとなかなか常備はしにくい。基礎調味料だけで作れるようになっておくと気が向いた時にいつでも作れて便利である(まあ、私が住んでいるところが最寄りのスーパーまで往復1時間かかったりするから余計に)。


 基本形だけにアレンジもしやすい。例えばケチャップを入れてみる。カレー粉を入れたり、タイカレーのペースト(グリーン・レッド・イエローそれぞれいける!)を味噌の代わりに入れたりする。インスタントラーメンのスープが余っていたら(焼きそばアレンジしたりすると半分残る)入れてみてもいい。その場にある調味料を活用することで七変化させるのだ。


 あれば、仕上げに薬味も入れよう。日本だとネギがスタンダードだが、本場では葉ニンニクを使う。もし手に入れば、根元の白い部分は最初に肉と一緒に炒めて、葉っぱのところは最後に散らそう。葉タマネギも同様に使える。少し変わったところではピーマンのみじん切りもあり。唐辛子の代用として、見た目と香り付けに赤ピーマンを使うというレシピは、周富徳氏の本で読んだ覚えがある。


 豆腐と肉を一緒に食べる麻婆豆腐は、植物性タンパクと動物性タンパクを同時に摂れるという意味でも健康的な料理である。ぜひ自分だけの味を開拓していただきたいところだ。

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