第51話 番外編② ペシミストのエルマー・1
信じて貰えないと思うけれど、僕は人生に絶望していたんだ。
僕の兄さんも姉さんも生贄になった。
……残っているのは僕と妹のユリアリアだけ。
だから今年はどちらかなんだ。
母さんは魔王だからくじ引きでは選ばれない。
せめて先代の魔王だった父さんが生きていたら話は違ったかも知れないけれど、父さんはフェンリルに立ち向かって殺されていたから。骨を拾ったりしての埋葬も出来なかったんだ。母さんを逃がそうとして、全部食べられちゃったんだって。
毎日僕はシクシクと泣いていた。僕とユリアリアと母さんが可哀想で、魔族のみんなでイリアディアの里から逃げたくってただただ泣いていた。
でも、もしも南のドバド奇岩地帯を縄張りにするフレスベルクや、北のデューバル温泉郷を支配するニーズホッグは空も飛べるから、ペガサスか飛竜でも無いと越えることさえ難しい。じゃあ西はって言うとガルムが湖畔に住んでいるキプトチャ湖があって、その向こうは大きな海なんだって。海は、水が塩っぱくて大きな湖みたいな所だって聞いた。じゃあ空を飛ぶのに力尽きたら、その海で溺れて死んじゃう。
ブロワン大魔森を飛んで逃げたって、アザレナ王国では僕達のような魔族は差別されているから、どこに行っても駄目なんだって諦めていた。
どうしようもないことで僕はずっと悩んでいて、何もせずにウジウジと泣いていたんだ。
でも……とうとうユリアリアがくじ引きで引いちゃったんだ。
だけど僕が代わりになるって名乗り出た。
だってユリアリアはまだ4つなんだよ?
いくらなんでもそんなのは可哀想で、あんまりにも嫌だったから。
怖かった。死にたくなかった。
毎日毎日あれだけワアワア泣いていたのに、死にたくない癖に何もしてこなかったのに、それでも僕は死ぬのが嫌だった。
泣きじゃくりながらブロワン大魔森を進んでいたら――僕の運命はそこで一変した。
フェンリルをやっつけて従えたアルセーヌさん。
とっても頭が良くて火薬の作り方を教えてくれたガブリエルさん。
まるで死んじゃったはずの兄さんと姉さんが戻ってきてくれたみたいだった。
しかも帝国の偉い人にスカウトされるなんて……凄いよ!
本当に凄いよ!凄すぎるよ!
二人はアザレナ王国から追放されたのに、そのことでちっともクヨクヨメソメソなんかしていなくって、僕は急に自分が恥ずかしくなったんだ。
僕はそれまで、ただただ泣いてばかりでそれ以外の何もしてこなかったから。
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