第49話 番外編① 罪深き聖人・5

 ……。

一人ぼっちのアリスタは可哀想なくらいに聡い子じゃった。

幼いのに己の立場、責務、身分、何もかもを弁えておった。

己のために母が死んだことも、己が肉親を廃して皇帝にならねばならない運命をも、理解しておったのじゃよ。


 代われるものなら代わってやりたかった。

どうして、どうしてと何度も思った。

もしかすればこれが――どれほど哀れんでも何も助けてやれんことこそ――ワシへの最大の罰かも知れん。


……じゃが、ある日。

アリスタがド変態な若造と切れ者の令嬢と、脳天気で徹底的な楽天家の魔族の坊やを連れてきた。

ド変態な若造は、まあ、どうしようもない変態じゃった。

されど若い内にある程度の変態の毒を舐めておかんといかん、年を取って摂取した変態の毒はタチが悪いでのう。

それはさておき、これほどの切れ者の令嬢を味方に引き入れたアリスタにワシは感心した。

最後の、魔族の坊やは世間知らずで甘ったれで、だが、それ故にアリスタの悲痛に自然と寄り添っていた。


 あのハーク相手の皮肉と毒舌でさえ、のらりくらりと交わしながら当人は脳天気な調子だったから、ワシなんぞ笑ってしまったわ。

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