第42話 逆襲の帝国

 帝国軍を二手に分ける。

ゴドノワからアザレナ王国に攻め込む奇襲部隊と防衛部隊に分かれて逆襲に転じる。


 ネイ将軍が防衛部隊を指揮し、ゴーディンさんの上官であるミューラー将軍が遊撃部隊の指揮を執ることになった。見た目は熊のごとき大男だけれども、ネイ将軍に比肩する有能な将軍である。

「ペガサス飛翔騎兵3000を以て、王都アザレナイアを急襲する」

地図を取り出したミューラー将軍は王都の所を指で叩いた。

「これで、嫌でも侵略軍が撤退しなければならない状況を作り出す」

ただし、とミューラー将軍は懸念材料をあげた。

「王太子のスキルの『威圧』が問題だ。ペガサスが威圧されてしまえばそれでお終いだ。

――そこで元皇太子ウィリアトスの『支配』を覆したアルセーヌにも来て貰いたい」

「勿論です。ただ、一つだけ条件があります」

「何だ?別に君のスキルをどうこう言うつもりは無いが……」

「軽蔑されるのは別に構いません。どうかガブリエルも同行させて下さい」

「彼女は鎧兜を着用できるか。でなければ許可出来ない」

「魔絹とミスリル銀(この前、石灰石の採れる場所から離れた所で、ニーズホッグが鉱脈を見つけた)で出来た新型の軽鎧の安全性能を試して良いのでしたら」

今まで重たかった鎧を一気に軽量化して機動性と快適性を向上させつつ、魔絹とミスリル銀を駆使して防御力も倍増させてある。


 ペガサス飛翔騎兵の唯一の弱点は、持続性だ。ペガサスに乗る騎兵の体重と鎧の重みに、乗せているペガサスも耐えられずにすぐに疲れてしまうのだ。

もしもその鎧を軽量化させることが出来て、かつ防御力も維持できたら、この問題の大半が解消する。

「……またか。また新しいものを生みだしたのか」驚きと呆れの入り交じったミューラー将軍の顔を俺は真正面から見返す。「まさに『黄金郷』と『新世界』の主導者だ、君達はな」


 追放された時とは真逆だった。

イリアディアの里から飛び立ち、ブロワン大魔森を越えて、俺達もフレスベルクとニーズホッグに乗って王都を目指す。

接近したら、飛竜に乗った兵が20ほど迎撃に上がってきたけれど、ペガサスの一蹴りや飛翔騎兵の槍の一突きで翼が破れてあっけなく墜ちていった。


 その後は弓矢もスキルも届かない王都の上空から、持ってきた煙幕弾やら催涙弾やら花火やらをばらまくだけだった。

下ではもうもうと煙が立ちこめ、その合間から花火の閃光が光り、爆音や悲鳴やらで凄まじいことになっている。

やがて王都の城門からネズミのように人々が雪崩を打って逃げ出していき、すぐに鎧を着た兵士でさえもその中に混じり出した。


 ――最終的に王都アザレナイアの宮殿の屋根に反撃のすべもなく白旗が掲げられた頃には、こちらはすっかり身軽になっていた。

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