第28話 エルマーの言葉に
「アルセーヌさん、何をやっているんですか!ガブリエルさんと喧嘩するなんて!」
言い争いを聞いたのだろう、エルマーがプリプリと怒りながらやって来た。
俺はモンスター娘4人に囲まれて、呆然としていたから助かった。
「俺……何をやったんだろうな?」
本当に心当たりが無いんだ、とエルマーに事情を包み隠さずに話した。
「それは……アルセーヌさんが全部悪いですよ」
「そりゃそうだよ、捕虜で人体実験をやったんだし」
「違いますよ。どうしてガブリエルさんに相談しなかったんですか?」
「だって失敗したら鞭打ちされるし、捕虜の人生を滅茶苦茶にしてしまうから、」
ゆっくりとエルマーは言った。俺にも分かるように、言ってくれた。
「ガブリエルさんはそんな重大なことをやるのに、一言の相談もしてくれなかったアルセーヌさんが許せないんですよ。
今までしっかり絆を築いていたと思っていたのに、実は相談される信用さえ無かったんだって思い知らされたら……誰だって悲しくなるんじゃないですか?」
「あ……」
「僕も付いていきますから、謝りに行きましょう!」
ガブリエルの部屋につながる廊下を歩きながら、俺はエルマーに礼を言った。
「ありがとうな、エルマー」
「命の恩人のアルセーヌさんに言われると恥ずかしいや……」
エルマーは照れたけれど、俺は感謝と尊敬の言葉を続けた。
「エルマーは立派だ。さっきだって俺が分からなかったことをすぐに言葉にしてくれた」
「皇女殿下がですね、人質に不当な待遇は出来ないって、家庭教師の先生を手配して下さった上に図書館に出入りできる権利を下さったんです。勉強って難しいけれど、すっごく楽しいんですよ!」
「言葉に出来ないものを可能な限り言葉に変えていく力って知性と知識を鍛えないと育たないからな。……本当にエルマーは頑張っているんだな……」
「えへへ。楽しく頑張っていますよ!」
俺はガブリエルの部屋の戸を叩いた。
「ガブリエル、俺だ、アルセーヌだ。君の信頼を裏切って……ごめん」
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