第24話 皇女殿下は火力がお好き
快晴の日。
皇女殿下がお披露目したいものがあるそうで、議会派の主立った連中を集めていた。
でも、シーウンの街の外に集めるなんて……何をしたいんだ?
「実は大幅に我が議会派の戦力を上昇させる兵器が完成したのだ」
皇女殿下はそう言って、背後にある台から覆い布を取らせた。
鋼で出来た大筒が姿を見せる。筒の一方が厳重に閉じられていて、その底の方には丸い鉄の塊が入れられていた。
何だろう?
俺達は皇女殿下の更なる説明を待った。
「これは火薬を用いて使う兵器だ」
皇女殿下は騎士達に命じて、その大筒の空いている先端を平原の方へ向けさせる。
的として木箱がいくつか詰まれていた。
「放て」
騎士の一人が持っていた棒に点火して、大筒の中に火を入れると――。
凄まじい爆発音と煙と共に中から勢いよく丸い鉄の塊が撃ち出され、命中したその一発で的の木箱をことごとく爆散させた。
「これは!?」
血相を変えたデズ卿達に皇女殿下は自慢げに言う。
「朕のスキルが『方向』だと言うことは卿等も知るとおりだ。これは鋼の砲弾を火薬の爆発の力で撃ち出す兵器。その後は朕の『方向』で操作し、的に必ず命中させて――あのようになると言う訳だ」
これは、下手をしたら城壁さえも一撃で破壊するかも知れない。今まで使われていた投石兵器や攻城塔より明らかに火力はあるのだ。音も凄いから敵も怯む。移動などの取り回しは台座に車輪でも付ければ良いし、火薬の装填だって俺達が粉から丸める技術を見つけたから、迅速に出来る。その都度に粉を計って詰め込むより、丸めてまとめた火薬を詰め込む方が手早くて安全だからな。
だから皇女殿下はわざわざイリアディアの里にいた俺達と、自ら出向いてまで掛け合ったのか。
己のスキルを最大限に活用できる、この兵器の完成のために。
――『恐怖』や『支配』と同様に、『方向』も使い方によっては恐ろしい可能性があるスキルだった。
「無論、朕が不在の時のため、今後はこの『火砲』の訓練も主に歩兵達に実施したいのだが……」
量産体制に移行する費用をくれ、と皇女殿下は正々堂々とデズ卿達に言った。
「誰が……誰が否と言うとお思いか。これがあれば……」
デズ卿は目を血走らせてさえいた。
「ようやくレンベルティンの街を救える……か」
小さな声で皇女殿下が呟いたのを俺は聞き逃さなかった。
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