第22話 エロスライムのセクハラ的活用方法
――走って戻った俺達の目の前。
皇女殿下の真正面から暴れ馬が2頭も走ってきた。
急ぎ護衛の騎士達が抑えこんでいる間に、残る1人の騎士が皇女殿下を連れて安全な所へと退避しようとしていた。
「何してんの?」
俺がその騎士に声をかけると、ソイツはすぐさま手に隠し持っていたナイフを皇女殿下に振り下ろした。苦しませてから殺すための毒液が塗られていて、嫌な光を放っていた。
――やっぱりそう来たか、と俺も胸をなで下ろした。
予防線として先に『エロスライム使役』を使っていて大正解だった。
騎士に扮していたベルナールの足下に這い寄っていたエロスライムが一気に体積を増して、その全身を包み込んだ。
ジュワッ!とベルナールの変装ごと服が全部溶けてしまう。
どピンク色のエロスライムの中で溺れているベルナールが俺の方を見て、目を見開いた。
『…………!!!!』
口を開けて何か言おうとしているが、エロスライムで窒息死するかも知れないのに悠長な態度だなと思う。
エロスライムは人体以外の全てを溶かしてしまうし、全身を覆われれば『暗殺術』でも脱出はほぼ不可能だ。
結構、エロスライム使役って便利なスキルじゃないかな?
……まあ、何の目的で本来は使うのかを考えれば……うん、ああ……そうか、ってなるけれどさ……。
「申し訳ございません。お見苦しいものを御前に晒しまして」
エロスライムの余波を食らってあられもないお姿になりかけている皇女殿下に俺は自分の上着を脱いでかぶせる。
その頃にはガブリエル達が呼んでくれたのだろう、増援の騎士達も集まってきてくれた。
「アレは血縁上は俺の兄なんですが、絶縁されましたから赤の他人です。このまま煮ましょうか、焼きましょうか、溶かしましょうか?」
ベルナールの顔が恐怖と息の出来ない苦痛に酷くゆがんだ。
「無力化出来るか。情報を引き出したいのだ」
「『洗脳』と『淫紋支配』で出来ますけれど、ちょっと相手のスキルが『暗殺術』なので……あ、そうだ」
抵抗されたり、洗脳を解除されたりする可能性がとても高くて面倒だったが――とても良い手段がまだあった。
「その……ありますけれども、お願いがあります」
「何だ」
「軽蔑しないで下さい……本当にお願いします……!」
「またか」
呆れた顔の皇女殿下に俺は小声で、言った。
万が一にもガブリエルやエルマーに聞かれないように注意を払ったつもりだったが……。
「『人格排泄』ってのが……ありましてですね……」
「ひっ」
背後で息をのむ気配がしてはじかれたように振り返った俺の前には、エルマーの耳を両手で塞いでいるガブリエルの姿があった。
俺は、人生がちょっとだけ嫌になった。
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