第13話 皇女殿下は切れ者がお好き
「端的に問う。これを作ったのはうぬらか」
机上に置かれたのはあの行商人に渡した火薬の丸い粒だった。
「左様でございます。アリスタルサ・ウルクラガ・ラディ・ロースタレイン皇女殿下」
ガブリエルが言うと彼女はごう慢そうに笑う。皇女殿下自らがお出ましか。
「良いな、気に入ったぞ。火薬の存在は朕も存じていたがここまで加工したものは初めて目にしたし、これほど質の良い火薬にも初めて出会ったのだ」
「それはどうもありがとうございます。ところで、殿下の急なご来訪のご要件は何でしょうか」
「要件を語る前に朕のスキルについて話さねばなるまい。朕の叔父と兄は凄まじいスキルをそれぞれ所持しておる。『恐怖』と『支配』……朕の『方向』は残念ながら2人のこのスキルには皆目歯が立たぬ。だが……」
皇女殿下は堂々と言った。
「スキルなんぞは知識と知恵と発想次第でいくらでも使いようがあるとは思わぬか?アザレナ王国から追放された者達よ」
「ご存じでしたか」
「アザレナ王国とは先週に兄が手を結んだ。それ以前から動向は常に把握してある。うぬのような切れ者を追放するとは何とも愚かな真似をしたと思っておったわ」
「過大評価です」
「莫迦を言え、元ケルテラルス侯爵令嬢。うぬがケルテラルス侯爵家や王太子を支えておったも同然だ。そもそも、うぬがいてくれれば朕と手を組んでくれたに違いない」
マジか。本当に頭が良いんだ……ガブリエルは。
「今の私はただのガブリエル・レルネです」
「ではガブリエル・レルネ。朕自らがここに来た要件を言おう。朕の旗下に加わるか、この丸めた火薬を朕の軍団に独占させよ。代価としては……イリアディアの里に安定的な物資の供給と、朕の軍団を駐屯させて魔族の身の安全の保障を叶えよう。
他に欲しいものはあるか?」
「魔族全員にロースタレイ帝国の市民権を」
「言うのう。まあ、この火薬を独占できるならば安いものだ。ただし人質として魔王か魔王の家族から1名は共に来て貰うぞ。知ってはいるだろうが、反乱を抑えるための帝国の慣習でな」
「存じていますが、それは私で代わりになりませんか」
「何でしたら俺も行きます」
俺はガブリエルに続いて言って、ひとまずフェンリルから本来の姿へ戻して行った。
流石の帝国のペガサス飛翔騎兵も青ざめる。
「この通り、大食らいですが頼もしい従者も4人いるので」
もう一度4匹を『モンスター娘』にすると、皇女殿下の表情にもわずかに安堵の色が浮かんだ。
「そうか、ブロワン大魔森で生き残ったはそちの力か、元トパーリン公爵令息」
「今の俺も、ただのアルセーヌ・ダヴーです」
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