第11話 ちょっとした工夫とエロスライム使役

 ロースタレイ帝国はまだ火薬の詳細な威力を知らないだろう。

どうやって売り込むか俺達は計画を練りながら、先に火薬の威力がどれほどのものかを確かめることにした。

「ただ岩を爆発で壊すだけなら、ロースタレイ帝国のスキル所持者でも可能じゃからのう……」

ヘルナレアさんやエルマーだけじゃなくて、魔族の人も一緒に考えてくれた。

食糧事情をどうにかするためなら、手伝ってくれるって。

「魔族の誰でも扱えるようにしたいよね」

「うん、魔族なら普通に扱えるようにしたいぜ」

「そうすりゃ珍しい特産品になるけどぉ……」

魔族はスキルを持たない代わりに誰しもが魔法を持っている。

魔王だけあってヘルナレアさんは強大な魔法が扱えるが、他の一般の魔族はランプ代わりに指先に火を付けたり、暑いときにそよ風を吹かせたり、手を洗うために水をちょっと出したり……そんな地味な魔法しか使えない。

「……」

ガブリエルは火薬を見つめている。そしてぽつりと呟いた。

「粉だと……誰でも便利に扱えませんね」

粉じゃ持ち運びには不便だし、ちょっと火が付いたら全部が燃えて爆発してお終いだ。

エルマーが冗談を言った。

「これが粉薬を飲むときみたいに、水分を加えて練ることができたら僕だって扱えるかもね!」

「「それ!」」

俺とガブリエルの声が重なった。エルマーがヒャッと声を出してすくみ上った。

「ガブリエル……あー、どうかこれ以上軽蔑して欲しくないんだけど、俺のスキルに『エロスライム使役』ってのがあって……」

「スライムの成分を私が分別しますから。エロは要りません」

「うう、スキル名なんだ……」


コネコネ。どピンクの見るからにどすけべ色をしたエロスライムを使役して俺は火薬を小さく丸めさせる。コネコネ。火薬にエロスライムの水分がしみこんでいく。乾燥させる段階で『分別』して貰って――。

出来上がったのは小さな丸薬だ。

これが上手く爆発するか……試してみよう。


 パアアアアアーーーーーーーーーーン!!!


 うん、上々だな!……初めて聞く爆破音にユリアリアちゃんが漏らしたことを除けば。


 魔族ならこれくらいの水を出す魔法や、炎を使わずに練り上げた後の火薬を固めるような魔法は誰でも使えるから……行けるかも知れないぞ。

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