第9話 御主人様×4と呼ばれまくるも
俺が悪いんだけれど助けて。
ガブリエルとヘルナレアさんからの視線がいよいよ冷凍ビームになってきたんだ。
エルマーやユリアリアちゃんの無垢でキョトンとした眼差しも、なかなかに辛いものがある。
ガルムはつるぺたな犬娘、フレスベルクは一体俺の何の性癖を反映したのかも分からないどすけべな鳥娘。
――真剣に修行僧になって、俺は己の煩悩や性欲と戦うべきではないのかって考えてしまう。
「男って……」
「こう言う生き物なのじゃ」
反論したいけれど出来ない。
4人のモンスター娘にベッタベタに甘えられている俺に出来る訳がない。
「そ、そのですね、」
俺達がイリアディアの里に来てからおよそ一ヶ月が過ぎた。俺は一応は『魔族の救世主』なんて呼ばれ出して、エルマーやユリアリアちゃんからは『アルセーヌさん』『あるせーぬしゃん』なんて慕われているけれど、ガブリエルやヘルナレアさんを始めとする女性陣からの好感度は日に日に下がる一方だった。
一つだけ言い訳するとしたら……いや、ここで言い訳するのは卑怯だ。
どのような理由があれど洗脳して従わせている張本人は俺なんだから。
「いえ、やっぱり何でもないです……」
「……アルセーヌはそう言う所が卑怯なのですわ」ガブリエルが謎なことを言いだした。「本当に卑怯だと私は思います」
「そうじゃ。真にずるい男じゃのう」
言い訳していないのにどうして卑怯なんだろう。
俺は萎縮しつつも不思議でたまらなかった。
でも今もベッタベタに4匹に甘えられている訳だし、仕方ないかも知れない。
「そ、その……今度は、魔族の食糧問題についてなんですが」
『モンスター娘』になっても4匹?4人?はとにかく食欲が凄かった。
元の体格を考えれば遙かに燃費が良い方だけれども、決して豊かじゃない魔族の食糧問題を悩ませている要因になりつつある。
「元々……イリアディアの里は四方を湖や森や岩砂地に囲まれていての。畑として使える土地はほとんど無いに等しいのじゃ。木の実を採取し、狩りを行っても限度がある。雨も多い故、焼き物を作りたくても上手く乾かぬし……」
ヘルナレアさんは暗い声で言った。
このままじゃ俺は、大食いの4匹を連れてまた追放されるかも知れない。
「何か……こう、良い交易相手でもいれば……そうだ!南方のロースタレイ帝国はどうでしょうか」
ロースタレイ帝国からたまにイリアディアの里へ、飛竜に乗って行商人が来ているのだ。
――ロースタレイ帝国。
大陸西南方の広大な領地を治める大帝国で、アザレナ王国とは比較できない程の豊かな国家なのだが、この数年の間は皇位継承戦争で荒れていると聞いていた。皇帝の弟と、皇太子と、皇女が三つ巴になって内戦を繰り広げているらしい。皇帝の弟は貴族派、皇太子は皇族派、皇女は議会派に担ぎ上げられているそうだ。
ロースタレイ帝国は、アザレナ王国のように魔族だからと差別はしないので(帝国=多民族国家だから)、まだ相手にして貰える見込みがある。
「食料と、何を交易するのじゃ。我らに金になる特産品など何も無いのじゃぞ」
ガブリエルが俺を見て頷いてみせた。
「アルセーヌ、探してみましょう。私の『分別』があれば何か見つかるかも知れませんから」
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