第8話 御主人様は俺のようです

 ニーズホッグを従えて帰還した俺達は重大な問題に直面する。

「コイツらの餌をどうすれば良いんだ!?」

2匹ともずば抜けた巨体である。

しかもフェンリルの方は子狼もいる。

イリアディアの里で、どうやってコイツらの餌をまかなうんだ?

元々の食料生産力が低い。

でも、かといって『勝手にしろ』と2匹を放り出すことも出来ない。

まだ『ガルム』と『フレスベルク』がいるからだ。

「……せめて小型化できれば……」

ガブリエルが呟いた瞬間、俺は閃いた。


 ――そうだ、『モンスター娘』があった。

「ガブリエル、エルマー、ヘルナレアさん、ユリアリアちゃん。先に言っておくが俺は変態じゃない。断じて変態じゃないから」

「「「「???」」」」

「お願いだから軽蔑しないで下さい!」

全員が首をかしげている前で、俺はフェンリルとニーズホッグ相手にスキルの『モンスター娘』を使った。


 ――ばふん!ぼふん!

大きな白煙の柱が2つ上がったかと思うと――。


 「アタシの大事な御主人様ぁ~♡」

「すっこんでいろ雌犬!私の御主人様だ!」

恐れていた通りに……とってもとってもグラマラスでセクシーでどすけべなお姉さんのフェンリル(犬耳と尻尾付き)とニーズホッグ(角と尻尾と翼付き)が登場したのだ。咄嗟にエルマーの目をヘルナレアさんが、ユリアリアちゃんの目をガブリエルが押さえ込んだくらいにどすけべだった。

しかも裸だった。

全部が全部、アウトでしか無かった。

「……アルセーヌ」

ガブリエルの目が怖い。

「ごめん、これは俺の性癖です……多分」

「いえ。二人の情緒に悪いので服を探してきますわね」

ごめん。


 服を着て、何とか直視できるようになった後でもフェンリルとニーズホッグは俺にべったりとくっついて離れない。

俺が完璧に洗脳した上に淫紋支配しているから仕方ないかも知れないけれど、ガブリエルの冷たい視線が辛かった。冷凍ビームかって思うくらい。

「アタシの御主人様~♡」

「だから私の御主人様だ!」

止めてくれ、マジで。争うのはマジで止めてくれ。

俺の胃と俺の尊厳と俺の性癖の秘密を守るために争わないでくれ。

「…………」

ヘルナレアさんの冷たい視線にも……耐えきれなくなってきたぞ!


 「あ、あのさ。これから魔犬『ガルム』と凶鳥『フレスベルク』をやっつけたいんだけど、力を貸してくれないかな?」

「はぁ~い♡アタシとニーズホッグが一緒に襲いかかって動きを封じますね~」

「だが御主人様、私が一番だからな?くれぐれも忘れないでくれ」

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