餅のようなケツを叩け

 ――ギャルが部室でケツを出してた。 


 遡ること数分前。ショウコはエンマの隣にぺたりと座り、モニターに綴られていく男女のやりとりをうっとりと眺めていた。


「SMシチュってえっちいよねー」

「むむむ……」


 これだからギャルは苦手だとエンマは眉をしかめる。馴れ馴れしくて鬱陶しい。教室では席が離れているからいいものの、部室となると話が違う。狭い四畳半では逃げ場がない。

 

 ただ、いたずらをするには好都合だった。スカートに手を伸ばす。


「Siri、なんかいいSMのアイデアを捻りだして」

「えっと♡じゃあ『尻餅しりもち』はどうですか♡」


 ――尻餅とは。正月に餅をつきたいけど金がない。だから奥さんのお尻を叩いて、近所に餅ついてるアピールをする落語。


「餅つきのつもりでお尻を叩いて欲しいなあって♡」

「ちくしょう。天才だ」


 というわけで現在に至る。


 ショウコはおずおずとお尻を差しだすと、スカートを捲った。まんまるで白いのがまろびでた。フリル付きの淡いピンク色のパンツは、ワンポイントに苺の刺繍がしてあった。


 思わず可愛いと言いかけて、口の形を変える。


「か、綺麗なケツじゃん」

「ほんとにほんと?」


 振り向いた顔は子供みたいだった。その表情だけでエンマは察した。お尻もコンプレックスなのだと。綺麗なのは本音だったから、もう一度ちゃんと言ってあげた。


「ほんとに綺麗だよ。叩きがいもありそうで」

「えー♡なら早く叩いて♡」

「はいはい」


 なでなでするとぷるりと震えた。


 これから叩くのは尻ではなくあくまでも餅だ。職人になりきって手を擦り合わせる。準備してきた袋から、ほかほかに蒸したタオルを取り出すと、餅にぺたりと乗っけた。


「あっ熱っっ♡」

「ごめん、熱すぎたかも」


 急いでふーふーする。これがまた刺激になって、びくびくと震えて嬌声を漏らす。だんだんエンマは楽しくなってきた。もう一回、蒸しタオルを乗せてみた。


「ああっ♡ちょっと冷めてるっ♡」

「へへっ」


 ほかほかの餅がぷるぷる震えてる。これで準備は整った。手をすっと上げ、そのまま勢いよく振り下ろす。


 パアンと快音が響いた。


「あ、これやばい」


 リズムよくパンパン叩くたびに、白い餅がぐわんと波打つ。気持ちよさそうに声を上げて喜ぶ。あんあん言って、ぱんぱん鳴って、もう叩いてる方はやる気まんまんで。


「それ行けっ!」

「あんっ♡あーんっ♡」

「餅が喋っちゃだめでしょ!」

「もちもちっ♡」


 仕上げに餅とり粉をまぶして揉みこむ。二つの大きな餅はふるふる震えていて、その真ん中に苺の刺繍があった。よからぬ衝動が湧き上がってきた。抑えられなかった。


「やばい。食べたい」

「え、エマちん!?」


 大きく口を開けると、柔らかい苺大福にかぶりついた。唇でちゅうと吸い付く。アイデアが餅のようにぶわっと膨らんできて、弾けて正気を取り戻した。口についた粉を袖で拭う。


「ごめん、なんか美味しそうでつい」

「美味しそうって、それ好きってことじゃん♡」

「いや違うから」

「違わないって」


 粉まみれのお尻をぶんぶん振ってくる。苺パンツはずんずん後退してきて、ついにはケツで壁ドンした。


「お尻を見せた仲なんてもう恋人だよ!」

「いいや、しりあい!」

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