丁寧系ギャルは好きですか?

 前略、エッチなギャルに告白されました。


 そんな始まりで小説を書いてみたのはいいが、それ以降一切進まない。甘い香水の匂いが部屋中にしていた。ギャルは三つ指をついて、旅館の女将のように丁寧にお辞儀をした。


「ショウコです。今日から奥さんになります」

「じゃあ明日から離婚で」

「そんな殺生な。捨てないでくださいまし」


 ショウコは足を崩すと、ぶかぶかなセーターの袖で口元を覆い隠す。わざとらしく瞳をうるうると潤ませる。やっぱりギャルは苦手だとエンマは溜息をついた。


「好きなんて嘘のくせに。私、何もしてないよ?」

「したよ、してくれたじゃんっ」


 今度は本当に潤んでいた。

 

「コンプレックスだったの。エッチなことばっかり考えて。でも誰にも言えなくて。胸がずっと痛くて」


 声は泣いていたが涙は流さなかった。メイクも一緒に流してしまうから。ショウコは姿勢を正すと、顔をぐっと近づけた。


「エマちんのお手伝いがしたい。あーしのコンプレックスが役に立つかもって。それで考えたの。『たらちね』ならどうかなって」


 ――たらちねとは。美人の若奥様にはある欠点があった。それは、あまりにも言葉遣いが丁寧すぎるというもので。


「つまり落語みたいな口調でエッチすると」

「うん。丁寧な言葉遣いのギャルってえっちくない?」

「……天才じゃん」

「えへへ♡では夜伽をお願いします。エンマ様♡」


 一歩下って恭しくお辞儀をする。


 ギャルは苦手だ。ただ彼女のコンプレックスは好きだ。エンマは彼女の力を借りようと決めて、後ろから抱きついた。


「え、エマちん!?」

「口調が戻ってるよ」

「は、はい♡」


 これからされることに期待して呼吸が早くなる。なめらかな曲線を描いて膨らむピンク色のセーターは、ふるふると小刻みに震えていた。桜餅のようなおっぱいを丁寧に撫でる。


「お胸の方はちょっと、今日はその、あの♡」

「だめなの?」


 エンマは前髪を揺らして覗き込んだ。ショウコは背筋を伸ばすと、首をふるふる振った。


「お願い致します♡」

「それじゃ遠慮なく」


 下から支えるように持ち上げると、ゆっくりと指を沈みこませて行く。そのままセーターを脱がそうとすると、手で制された。


「そ、それだけはやめてくださいまし」

「ここにきて恥ずかしがるの?」

「いえその、胸当てを忘れてしまって」


 どうりで柔らかすぎるとエンマは思った。


「それに先っぽがその……徳川埋蔵金なのです」

「埋まってる?」


 ショウコは両手で胸を隠すようにして頷いた。涙目になっていたのはコンプレックスだったからだ。そんなことはおかまいなしに、エンマは目を輝かせて言う。


「そんなの神じゃん。私が発掘してあげるっ」

「ま、待って――」


 両手で胸をぎゅっと寄せると、乳輪をくるくると指でなぞる。身悶えて抵抗してもエンマは止めようとしなかった。


 まどろっこしかったからだ。一々他人と比べて自分を卑下するなんて馬鹿げている。こんなに良いところしかないのに。だから耳元で囁いた。


「もう全部肯定してあげるから、出しちゃえ!」

「あっ♡嬉しゅうございますうっ♡」


 制服を押し上げるようにぷっくりと二つ、膨らんだ。


「アダムとイヴだ」

 

 エンマの創作意欲もむくむくと湧きだしてくる。急いで机に向かおうとして足を止めた。放心状態のギャルがいたから。


「大丈夫?」

「うん。気持ちよかった♡」


 変態さに関心してほっとする。結婚は丁重にお断りするけれど、これから一緒にいてもいいだろう。それになんだか放っておけないし。エンマはそう考えて三つ指をついた。


「まあその、今後ともよろしく」

「かしこまり♡」

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