煙突

競かなえ

サンタクロース協会の誤算

「では諸君、素敵なクリスマスを届けてくれたまえ!」



 俺たちサンタ見習いが所属するサンタクロース協会。クリスマスイヴの夜、不毛な闘いが始まる。


「ったく誰だよ煙突から入れってルール作ったヤツ」


「まあ……サンタのイメージを崩さないためだろ」


 今日はとある富豪の家にプレゼントを届けに行く。手紙をもらった挙句、きちんと煙突から入ってほしいと指定付き。煙突から入るって泥棒と一緒なんだよな。

 親切に煙突内の掃除は行き届いていた。


「サンタさんだ!」


 マズい。起きてやがった。泥棒……サンタさんが子供に見つかったらダメだろ。


「サンタさん、私ちゃんといい子にしてたよ!」


 だからプレゼントちょうだいってことな。

 ……そうか、プレゼントを渡せば俺はサンタさんなんだ。サンタと泥棒は紙一重だ。そして煙突から出れば正式にサンタクロースだと認められるはずだ。

 

「いい子にしていたお嬢ちゃんにはこれをあげよう」


 赤い包装のプレゼントを渡して足早に去る。

 煙突をよじ登って外に出て、その場を走り去った。

 現場の近くを通りかかった嫌な大人が泥棒だと通報していたような気がするが、そんなことは気にしない。



 だって俺はサンタさんなのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

煙突 競かなえ @Kanae-Kisou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ