第15話
注意
翻訳つきですので、ややこしくならないようにお気をつけ下さい。
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「こいつは、俺のかつての友人だ。」
エデンはあり得ないと驚いているのか、目が開ききっていた。
俺も吐いた後、その方を見ては驚いていた。
たしかエデンの年齢は300を超えているはずだ。それにエデンの友人ってことはたぶん年は近いはず。
だとするとこのおばあさんももう300年は生きている。見た目は人間で言うところの60代のおっさんにしか見えないので、それが信じられなかった。
「……え、それって……え?300年前の?」
「そうだ、300年前に……事故で仕方なく生き別れてしまったんだ。」
「エデン以外に300年生きてるひ、蜘蛛っていたんだ。」
「いや、たぶん奇跡が起きたんだ。人間で言うと140歳くらいだから、普通ならもうとっくに死んでるはずなんだ。」
俺に対するエデンの声は、心のそこから安心したような、丸く優しい声になっていた。
器用にぶつぶつなにかを願っている友人と話しながら、俺に友人とどのような関係でどんな別れ方をしたのかをテレパシーで聞かせてくれた。
彼女らは同級生の優秀な人達のうちの一人で、「八方美人」と言われていた。他にもう一人「天才だけどバカ」なやつがいたらしい。そいつは八方美人から聞くと老衰で死んでしまったようだ。
別れた経緯は、要約すると、ここの洞窟でドラゴンに襲われてしまい、逃げてる途中エデンだけはぐれてしまった。その後ドラゴンからはなんとか逃げ切れたものの、その先にあった穴に疲れてフラフラしていたら落ちてしまったのだという。
なんというおっちょこちょい……と思ったがエデンに伝わってしまうと怒られるため心のなかに留めておいた。
エデンは友人と、外国語のように訛った日本語を使って会話している。
だんだんとエデンに涙が浮かんでくるのが見えた。実に300年ぶりの友人との再開であるので、その感動は俺には計り知れないものだった。
「えでん!ひさっちゅうな!」
――エデン!久しぶり!
その声は2重に聞こた。エデンたちの言葉と、翻訳された日本語である。
日本語は機械音声ではなく、頭の中で無意識に変換され、何らかの影響で同一人物のような声に聞こえているようだ。
「えあ。ひさっちゅうなや。げんき?」
――ああ。久しぶりだな。元気してた?
「げんきゃげんきゃ!だがも、こんなおばはんだがな!」
――元気元気!けどもうこんなおばさんだけど。
「よかたーよ、しんだとならどないしょかったあ……や涙が」
――良かったよ。死んだらどうしようか、と思ってて……やば泣きそう。
「なきゃな!なきゃな!なきゃな!こうしといきてとんのも、エデンのおかげちゃ?」
――泣くな泣くな泣くな!こうやって生きてるのも、エデンのおかげなんだよ?
「そかえ?……よかた。グスッ」
――そうか?……良かった。
その友人は泣いているエデンにひたすら声をかけるが、エデンの涙は止まらなかった。きっと自分のせいで友人に苦労をかけてきたのだろう。
俺のお腹の消化がその時すでに始まり、お腹の中か掻き回されるような激しい腹痛に苦しみはじめる。掻き回され内臓が押される感覚に、俺は犬の泣き声のように悲鳴じみたか細い唸り声をあげた。
「うおぉぉぉああ……いででで……えぇぇぇでぇん……たす、ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙……」
「ん?……アイツ……ドラゴヒューマ!?」
友人は俺の声に気づき、少しそれて俺の姿を見るなり、驚きながらも関心しいていた。
「ドラゴヒューマ、とした?」
「いやぁ、ドラゴヒューマたあ20年前に絶命したんちゅ話聞いたがなあ」
――いやぁ、ドラゴヒューマは20年前に絶滅したって聞いたんだけどなぁ。
「えっ、そうな?」
――へぇ。そうなん?
「そそ……なんても、ドラゴンとドラゴヒューマらさんが喧嘩んぬなって、そちゃ戦争なったと」
――そうそう。なんでも、一匹のドラゴンとドラゴヒューマ何体かが喧嘩になって、それから戦争になったんだって。
「へぇ〜。」
種族と種族で戦争って……どんだけ激しい「喧嘩」だったんだよ。と半笑いしながら思った。あっ、戦争もある意味種族同士の喧嘩か……?
エデンは俺を指して何か話しいているようだ。お腹はまだ痛いが、だいぶマシになってきたので話に耳を向けることができた。
「へぇ。てとは、あいちゃ生き残りみちゃ?」
――へぇー。っていうことは、あいつは生き残りみたいなもん?
「ああそうじけ。鑑定したや?」
――多分そうだな。鑑定はしてみたのか?
「したが、ドラゴヒューマとて違う種族らけんあ。蜘蛛ドラって」
――したけど、ドラゴヒューマとは違う種族って出てくるんだよな。蜘蛛ドラゴンって。
会話を聞いていると、俺の話になっていると今気づいた。
ドラゴヒューマっていうことは、「龍人」っていうやつか。
絶滅してしまったと聞いて、見たかったな、と俺は悲しくなった。
お腹の痛みは段々と引いてきて、大玉のように大きくなっていた腹も今では元に戻り、ちょっとは動けるようになった。
立ち上がり、エデンの元へ駆けていく。時間はかかったが、なんとかエデンの足のそばまで来ることができた。
「エデン……そいつ友人って言ったっけ?」
「に、ニグ?!ちょっと待ってても良かったのに……」
「大丈夫だ!見てのとおりピンピンだよ!」
「うお?!いつの間?!……よくみや筋肉質っちゃなぁ。」
――いつの間に?!……よく見ると筋肉質だなぁ。
だがその友人は俺のことを見て触りたそうにしていた。
「……触りたい?」
「あ……ああ!さわら!」
――ああ!触らせておくれ!
興奮し始め、顔が若干赤く火照り始めた。
俺が友人に近づき、触らせようとしたところでエデンがなにかに気づいて、俺らを止める。
「ちょっと待。毒持ってなーか?」
――ちょっと待て。毒は持ってない?
「毒なんてう出なや。もう200超えにゃってな。そらぁか数えとらん」
――毒なんてもう出ないよ。もう200歳超えてるんだから。それから数えてない。
「長生きですね。まだまだお元気じゃないですか」
「そうげ?あはは!褒めじょーやで!」
――そうかい?はは!褒め上手だねえ!
俺が褒めると、その友人が頭の後ろを書きながら照れ笑いをした。
「蜘蛛族の平均寿命は160年くらいだから、人間で言えば90代ってところだな」
「へぇー」
エデンと俺が話していると、友人は首をかしげながらも一生懸命に聞いているのが見えた。
「とこどえ、何語ではなしてや?」
――ところで、何語で話してるんだい?
「あ、えっとこれはに」「ちょっと話しやすいように訛ってるだけっちゃ!」
「っちょ!」
俺がエデンに文句を言おうとすると、念話が飛んでくる。
日本語だって言ったらだいぶ面倒くさいことになるからやめろ。
蜘蛛属は言葉で領地とかを分けるんだ。だから日本の話になると日本が蜘蛛族の的になっちまう!
似たような地名でもな。
ちょうどよくこの近くに二ホという国があるから、そこが被害に合っちまう。
だからやめておけ。見知らぬ街のなん十万もの人が死ぬんだ。超絶めんどいからやめてくれ。
とまくし立てられた。
一気に情報が送られてきて、俺は頭痛を起こした。
「訛か。なんかぁ不思議な訛な」
「そう?別に変じゃなーと思いが?」
――そう?別に変じゃないと思うけど?
「ま、ここはアンッチョの実質領地だもな。あり得るか」
――まあ、ここはアンタの実質的な領地だもんな。あり得るか。
「やっぱ、そっちに合わさほうがいいちょ?」
「いや、なんか別の訛にきこちょからいいけ」
――いや、なんか別の訛に聞こえるからいいよ。
「ふーん」
少し怒っているようだった。バカにしたとでも思われたかな。と思い、もうしないことを誓った。
「んで、きいちゃなかたが、生贄とかいってたば?」
――そういえばさっき聞こえたけど、生贄とか言ってなかった?
「……そうだや。いいにきぃが、私生贄なば」
――そうだ。言いにくいんだが、私は生贄なんだ。
生贄、神様に捧げると言う名目で理不尽に処刑する謎儀式のことなのだろうか。
友人はうつむく。
申し訳無さと悲しさを隠しているのだ。
せっかく会えた友達が神のような存在となり、それに生贄となって食われるなんて、当人の複雑な気持ちは想像さえもできない。
「……最後に話せてうれしゃ。さあ、早くしと軍が様子を見で入る。」
――最後に話せて嬉しかった。さあ、早くしないと軍が様子を見に入ってきてしまう。
「軍隊くらうぃなーだ?わたしゃ今神様みちゃもんやろ、だいじょぶ!」
――軍隊くらいなんだ?私は今神様みたいなもんでしょ?大丈夫でしょ!
「もち、エデンは問題な、だがそっちのドラゴヒューマはヤバいか。あいちゃドラゴンがめいっぱい嫌ってら。」
もちろん、エデンは問題ない。だがそっちにいるドラゴヒューマがヤバい。あいつはドラゴンを拒絶してるんだ。
「拒絶?なんでそんなことを?」
「親でも死んだちゃ?わからんが」
――親でも殺されたんちゃう?わからんけど。
「うわぁ……ドラゴン絶対ぶっ殺すタイプじゃん。」
「そゆこと」
友人のお陰で笑い話と化しているが、現実だったらなんともかわいそうなことだろう。
怖いもの見たさもあるが、戦うのはやめといた方がよさそうだ。
「ドラゴンは蜘蛛属にとって神様みたいな存在のはず……エデンがそういってたし。」
「あぁ。そちゃ。神様みたなドラゴンもいる。だが邪神となつら話ゃ別。とんでもない化物怪獣になか!」
あぁ。そうだ。神様みたいなドラゴンもいるよ。だがそれが邪神なら話は別だ。とんでもない化物怪獣になるんだよ!
「とんでもない化物怪獣……?」
俺が例えがわからずにいると、仕方ないなぁ。と言うようにため息を吐いた。
「大体はスカルドラゴンや例や。」
「なるほど、大体想像できた。とにかく極悪非道で、言葉で表せないほどキチガイってことでいいか?」
「そうだ。」
友人は大きく頷いた。
「そんなやつにこに連れとーこられて、大変だたな。」
「ああそう。ケツ蹴られたらり突っ込まれたれりしとぅ大変だた!……っと、もうそろヤバイかもな。」
友人がエデンに手を伸ばすと、膝をつき顔ごと伏せてしまった。
「えでん、いや神よ。時間がない。早く食べておくれ。」
「……どーすっぺかなぁ。」
エデンは悩んだ。
このまま生かしてもいいが、なんとなくめんどくさいことになりそう。
殺してしまったら友人が居なくなり悲しくなる。いつまでも後悔するだろう。
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