第14話 お客さん
「はあっ!……はぁ……はぁ、、、!?」
俺は慌てて目覚め起き上がった。とても寝覚めが悪く、うなされていたのか息があがっている。それに気持ち悪くなってきて、俺は寝かされていたベットから離れて穴を掘り、そこに吐いた。
息を落ち着かせると、辺りを見渡しなにも変わりがないことを確認すると、安心してまた横になった。
「ん……なんか、すごい気持ち悪い夢だったな……」
少ししてやっとその夢が記憶から消えかけているものの、その夢を気持ち悪いと思うのは変わらなかった。また想像するだけで吐きそうだ。
俺が起きたことに気づいたエデンが、こちらに近づいてくる。
「やっと起きた!死んだかと思ったよ」
「おはよ……俺そんな心配するほど寝てた?」
「うん、丸1日寝てたよ……死んだみたいに。」
「えぇ!?俺そんなに寝てたのか……」
普段なら長くても13時間くらい寝てたら自動的におきるはずだが、24時間も寝ていたのか。
いったい自分の疲れがどれだけたまっていたのか?と考えると恐ろしくなる。
今後特訓は控えることにしよう。
ゆっくりと起き上がると、俺のお腹が大きく鳴った。
「やっぱり腹が減ってるか。そういえば、寝てる間に食料が手に入ったんだ。」
そう言うと、また空中に空間のようなものを出し、そこに手を突っ込んで弄りはじめた。
そして取り出したのが、赤い鱗をした大きなドラゴンだ。
目の前に置くと、地面が揺れその振動が伝わってきた。
「久々のドラゴンの肉だ!」
「ドラゴンか、美味しそうだな!」
俺はドラゴンの肉と聞いてテンションが上がった。ドラゴンの肉は1ヶ月に1回ほど取れるものだ。
俺がまだ卵の中にいる時に1回だけエデンがうまいとずっと言いながら食べていて、卵の中で口もできてなかった俺は、その味を想像するしかなかったのだ。
だが、やっと食べられる。
この時をどれだけ待っていたことか。
そのドラゴンをエデンが魔法で切り分けるのを見るなり、俺はそれに目が釘付けになった。
「クリスタルドラゴンだから身も硬いが、その代わり中の肉汁がすごいやつだよ!」
「めちゃくちゃ楽しみ!」
「そうか、そういえばニグは始めての肉か!……なんか、今まで飯テロしててすまんかったな。」
「いやいや!どうでもいいからそれよりも早く肉!」
「あはは、はいはい。」
エデンには笑われてしまったが、そんなことなどどうでもいい程興奮していて、頭の中には肉という文字しかなかった。
それに肉汁という言葉を聞くだけで、目も輝き、よだれが溢れに溢れてきて、口の中から出そうになり、とっさに抑え吸い上げた。
エデンが切り分けてくれるまでひたすら待つ。
目の前のうまそうな肉を見て、只々待つ。その間、お腹はずっとなりっぱなしでまたエデンに笑われた。
首部分からサクリサクリと鱗ごとに切れていくドラゴンの肉は生臭く、匂いだけでは美味しそうに感じるものではなかった。
エデンがそのドラゴンをまるでマグロをさばくように次々と切り分けている。大体は牛と同じ体の構造らしいが、俺はその様子を見ていても、到底牛と同じなのかはわからなかった。
「よっ!ほっ!……ちょっと重……よっ!切れた!」
内蔵を取り出し、別の場所にそっと移す。
すべて内蔵を取り出すと、中に手をつっこみ、手の力だけで思いっきり鱗を開き、折り曲げてしまった。その手にはどっぷりと青い血が付いていた。
アジの開きのようになったドラゴンに、エデンは炎の魔法を全体的に広がるよう慎重に打つ。
細かく威力を調整しながら、ちょうどよく焼けたところを探しているのだ。
見つかったようで、そこから焼き加減にムラなく、ブレないように適度に移動しながら、丸々1匹焼いた。
焼きめが付き始めると、一気に焼き肉のようなこおばしい匂いと、油が激しく弾ける音が聞こえてくる。その音が耳に来る度、肉の味を想像してよだれがたれそうになった。
そして全体的に焼色が付いてきた所で、火を止めて頭を拭った。
「よし!大体できてきたぞ!」
「うおぉぉぉおぉおお!すっげえよ!」
「すごいだろ?といっても、焼いただけで味は薄いがな。」
その肉を見て、俺はつい叫んでしまった。
目の前に行くと美味しそうないい茶色になっていて、すぐにかぶりつきたいほどの匂いが顔中に降り掛かった。
エデンは「まだ生のとこあるかもだから、避けとけよ?食べたらお腹下すからな。」と言うだけで美味しそうにがぶり付き、食べ始めた。
まさかのそのまま行く食い方とは。
俺はエデンを真似するように、口を広げ肉にかぶりついた。
がりっ。と肉の繊維が切れる音がする。
「ん!」
口の中に広がる油とちょっとの塩味、そして焼かれた毒難から滲み出てきて、それががレモンのように口の中に広がり、量が多くて口の中から溢れそうになる。
何も調味料もいらないほどその肉は油の味が濃厚についていて、生まれてから思い描いていた念願の味にすっかり目を光らせ虜になった。
夢中になりすぎると味を感じなくなるとよくいうが、そんなことはなく、早く食べても味を感じるほどであった。
和牛とも海外産の肉とも違う、まるでハードグミのような食感も、その味を噛みしめるのにとても役立った。
噛めば噛むほどその身が小さくなっていく。代わりにどんどんとなくなることがなく増えていく肉汁、口の中からまた溢れそうになって必死に飲み込んだ。
それからはエデンと一緒にその肉を数十分書けて味わいながらぺろりと完食してしまった。
エデンと俺でだいたい3対1の割合を食べており、俺の腹は破裂しそうなほど膨れ上がっている。一方のエデンは全然平気そうで、むしろ物足りなさそうだ。
座り込み、パンパンなお腹の消化を促すためお腹をさすっていると、その姿を見てエデンが笑ってくる。
「ハハハハ!ニグ!今お前めちゃくちゃ間抜けな姿だぞ!」
「うるっさい!うっ……美味しすぎるのが悪い!」
「あはは!ま、まあそうだな!私ももっと食べたかったよ。だが1ヶ月に1回なんだよな、こうやってドラゴンが来るの。はぁ、もっと勝負挑んでこいよドラゴン!」
「うっ……っぷ」
これ以上言い返そうとすると、その腹の中のものが戻って来てしまいそうなため、その後は一言も発せずただじっと耐えるしかなかった。
中の物を戻して
「ちなみに、龍の肉は魔力を通すと膨らむんだ。だから回復魔法は逆効果で使えないよ。頑張って耐えてね!」
「ん!?」
それを早く言ってくれ!と叫びたいが、今にも戻しそうで叫べない。顔から血の気が引き、気持ち悪い感覚は喉まで上がってきていた。
そのエデンの顔に角が生え、まるで悪魔のように見えてきた。
ああ、早く消化されないかな……。とひたすら待つしかなかった。
エデンはその後、肉の匂いで寄ってきた生き物たちを倒して残りの食事をすましているらしく、頭の中にその視界が送られてきた。感覚共有だ。
だが、今回の感覚共有は様子が違った。
目の前にいるのはよだれを垂らして我を失いかけている蜘蛛族の年寄りだ。
地上で冒険者をしているようで、冒険者と同じ首輪をつけていた。
その上に、奴隷のような首輪をしていた。
その蜘蛛は、怯えながらもエデンに勇気を持って話しかけた。
「ああ……大蜘蛛、私は犠牲者づ……。ぜひ
エデンを見た瞬間そう言った。
言葉だけ聞いたら言葉に聞こえないくらい、訛りの強い方言のような言葉つかいだ。
気だるい、嬉しいというエデンの気持ちが感覚共有で伝わってくる。
どうやら今共有しているのは、視界と感情のようだ。
エデンはテレパシーを通じて焦った様子で話しかけてきた。俺が言葉を発せないことを考慮してくれたのだろう。
「ニグ、聞け。」
「(あ?)」
「今まで生きてきた中でいちばん厄介なのが来た。」
「(は?こんな老人が?今まででっかいのと戦い続けたじゃないか)」
「ええと、厄介っていうのはそういうことじゃなくて、精神的にだ。」
「(へ?……えっ、どういうことだ?)」
エデンはひと呼吸置き、地面に伏せてなるべくその蜘蛛の視界に近づいた。
「ぬあ、おりゃえでん。おぼっちゅう?」
ーーやあ、私はエデン。覚えてる?
「……あ?……あ?!おまえでん?!なんでおまぁが?」
ーーあ、え?お前エデンか?!なんでお前が?
そう話しながら、俺に緊張したような声で話した。
「こいつは、俺のかつての友人だ。」
「……うぇ!?うっ……」
俺は飛び上がる勢いで驚いた。
そのせいで体が刺激され、少しだけ戻してしまった。
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