間話 叫びの穴と蜘蛛たちの関係
※本編ではありません!!!!
叫びの穴。
私、ジャンクがあの卵を落としたのはこの場所だ。
時々叫び声と地揺れがおき、蜘蛛属や人々を恐怖に陥れる、あの呪いの穴。直径は町ほどで、現在の蜘蛛属の力では測定できないほどの魔力がつまって、その一部がにじみ出ている。
穴の怪物を抑えるため、毎年罪人の中でもっとも重い罪を抱えた極悪人がその穴に落とされて、捧げられる。今回は、ニケルという邪神に騙されたバカ野郎だ。不幸なことだ。
その後数十年は安泰をたもつと言われている。がそれはただの噂である。
「……卵が無事じゃありませんように。」
そう私は穴の側にある石碑に前足をあわせて願った。
「よお!こんなとこにいたのか。」
軽々しい挨拶が聞こえる。
後ろを振り向くと、上司である「ハル・エンチャル」ことハルさんがいた。
彼女はとても美人で、戦闘も単独でドラゴンを一体倒せるほど強く、しかも誰にでも優しい、女神のような存在だ。
卵の処理係の幹部をしている人で、見事な手さばきで卵の足を抑えたのも調査したのも彼女だ。
「ハル先輩!お疲れ様です!」
「おつかれー。卵のことでしょ?」
先輩は笑いかけてくれて、私も自然と嬉しくなる。
「ええ……あの卵は、なんだか他の邪神の卵と違うような感じがするんです。卵を一目見た瞬間、なんとなくですが、全く悪いことを考えて居ないように感じるんです。」
「まぁ全く無知なただの子供だからね。見た目はね」
私の、会話でおどおどしてつい早口になってしまう言葉使いを一度で聞き取れるのは彼女だけ。
それに私の意見に大体本心をぶつけてくれる、それがとても悲しかったし、嬉しかった。
「それに、まだ無知だから穴に落としたんだよ。」
「へ?それってどういうことですか?」
「これは会議で決まったんだけど……」
彼女は話してくれた。
どうやらあの卵は、最初の会議では保存して、国で育てて国の兵器にするらしかった。
けれどある心理に強い蜘蛛が、「彼がお母さんのことを知ったら、きっとあなたたちに復讐を企むだろう。そして蜘蛛属は壊滅するだろう。」と熱弁した。
その意見は議会では信用されず、鼻であしらわれる始末だったけれど、民衆に呼び掛けたらあっという間に噂として広がって、国に講義する人が増えた。
それで仕方なく卵は処分することになったらしい。
その後心理に強い蜘蛛以外は全員国民からの不信用で解雇だそうだ。
「……んでいま、王様投票やってるでしょ?」
「ですね、それなら私も投票しましたよ。フィリトスさんに」
「フィリトス!私もあの人良いって思ったんだよね!裏表ないし、ちゃんと報告された国民の意見を反映して、いろいろガツガツ言ってくれるもんね!」
彼女は政治が好きで、政治の話で盛り上がることは多くある。
彼女からも教えてもらうことが多く、気がつけば2、3時間はたっていたこももある。
彼女と話している間は不思議と飽きないのだ。
やはり今回も1時間ほど話してしまった。
ふと時間を調べると、もうそろそろ私の好きな店が閉じてしまう時間になっていた。
「あっ!やっばい、先輩!今日はここで失礼します!」
「オッケ。じゃあまた明日ね。私はこれから残りを片付けてくるから、待っててね。」
慌ててろくに挨拶もしなかった僕に、彼女は笑顔で手を振っていたので、俺はそれに振り返した。
最近は卵のことで大忙しで、卵もその親も居なくなってやっともらえた休憩日であるため、とにかくやりたいことをすることにしている。
なのに最初っからこうだと、「休み」なのに休むことができなさそうだ。
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