第2話 暗闇の中で 2

 どのくらい時間がたったのだろうか。

 外から聞こえる激しく爆発する音も気にならずに考えているときだった。


 無意識だったこともあり、自分の体が成長していることに気づいた。


 足がある。足だけだが、ある。


「……?」


 だが気づいたすぐあとは違和感がすごく、その足があるということだけで、足の動かし方を忘れてしまっていた。しばらく足がないことでそれが当たり前と化していたのだ。

 俺は足を動かそうとイメージを思い出して頑張って動かしてみた。


 動いた。ピクリとだが、少し動いたのだ。

 コツを掴めそうだ。


 何回か動かそうと1から足の動きを確認すると、なんとなく思い出して気がする。

 それから何度も練習した。すぐには身につかなかったが、体感的に3時間もかからず動かし方を思い出すことができた。


 俺は、それだけで達成感と希望が大きく残った。


 自由に動かせるってなんて嬉しいのだろう。と思って嬉しくなった。


 しばらく小さく動かしていると、段々と大きく足を動かせるようになり、やがて足の先に風を感じた。

 いつの間にか広い空間に足が出たようだ。地面は木で出来てコツコツと音がした。

 

 周りから驚く声も聞こえ、最初は俺の苦労を祝われている気持ちになった。

 嬉しがっているのは一瞬で、その声たちは恐ろしがって叫んでいたり悪魔祓いの呪文を唱えている声でもあった。ノイズ越しでもはっきりとわかるほど近い場所で行われていたようで、声が遠のいだものもいた。


「邪神の子……怖…………なぜ?」


 痛い

 足の裏になにかを刺された。

 先に液体がついていて、それを足の中でグリグリと回され、痛みを感じた。

 だが、痛みもヤスリで何回か擦った程度のほんのかすかなものだ。体の中で何かが渦巻き、痛みを解消したようだ。

 

 何がおこったのかはわからないが、とにかく俺は危険な存在扱いされているのだとわかった。

 とり合えす落ち着くか。と思い足を下げて力をぬいた。

 するとその足をペタペタと舐めるように触る感触があり、うずうずして足が震えてしまう。

 また足に何か刺され、足の震えは止まった。

 麻酔のピリピリという感触が伝わってくるのと、さっきまで動いていたというのに動けないもどかしさがなんとも奇妙だった。


「……ドラゴン、蜘蛛の粘液」


 そう聞こえる。

 俺をさわって調べた結果だろうか?

 少しすると足の麻酔は効果がなくなってきて、また足が動くようになった。

 足が動くと気分が上がる。


「……邪神、おい。やれ。」


 今度はそう聞こえると、急激に足に当たる風が強くなる。

 上からでも横からでもなく、下から。


 落下してる。直感的にそう感じた。

 俺の体は穴の壁に打たれ、足が折れそうなほど潰された。


 何が起きているんだ。なんで俺は落とされているんだ。などと俺は考えた。

 落ちる直前に邪神とだけ聞こえたので、それが原因だろうか?


 俺はなんの抵抗もできず真っ逆さまに落ちていった。落下時の傷はすぐに回復し、痛みも蚊に刺されの跡くらいの痛さだ。


 だが落下する感覚が永遠と続き恐怖がとても強くなってきた。


 いつになったらこれは終わるのだろうか。


 俺はいつまでも続く穴を落下していった。


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2024年9月27日 19:00 毎日 19:00

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