第39話

このニュースは国民を驚かせ世界にも配信された。ツルギを知る者はあの衝撃的な映像を思い出し、日本の侍に対する様々な想像を膨らませツルギを英雄視していた。これは学生運動に無関心だった人間も巻き込み日本を大きく揺さぶり、その背景を知る者には世界の人々さえもその心を揺さぶった。

さらに日本の大学生もその重い腰を上げ活動に参加し始めた。

新聞マスコミは世の中の微妙な動きを読めずに論調を「猫の目のように」変えた。

テレビのコメンテーターは論評に苦しんだ。

「ニューワーカー」は各地に政治集団を作りそれぞれの集団を自然発生的に「改新」と名乗った。ツルギの心は日本の隅々にまで行き渡っている。知らず知らずのうちに。

改新の名は以前から飛び交っていたが今は「改新」の名の下にそれぞれの市の名前や会社名を付けてそれぞれが名乗りをあげた。

日本の将来に不安を抱く者たちは改革を誓って手をつないだのである。

結果的にツルギの逮捕は社会を沸き立たせた。

「火に油」とはこれを言うのかもしれない。


社会の流に鈍感な官僚と政治家。「今」を変えたいと思わない一部新聞。

ある新聞はツルギの脱税の疑いには触れずに「未成年の娘はだまされて政治活動にのめり込んで、困っている」といってその両親の嘆きを伝えた。

また、「学生活動家から強引に参加するように勧誘されて困っている」という学生の話をニュースの中で毎日のように流した。

そのやり方に全国の若者の多くは反発した

「大人が行動しないから我々が行動するのだ」と声を大きくした。


改革・変革の火の手は全国に広がり、「国会議事堂、各官庁へ行動を起そう!」という機運は

ますます広がっていった

それでもなおツルギを釈放しようとはしない警察。

その警察は、「ツルギがいなければ、学生やその他の組織に的確な指示は出せず事態は沈静化するかもしれない」と判断していた。

8月7日の行動日までツルギを釈放しない予定でいる。確かにこの全国的行動はツルギがいるから出来たのだ。

抗議行動をする者にとってツルギの逮捕の影響は大きい。しかしここで意外な人物が登場する。ツルギの秘書の本多ユキ。

このキャラクターは組織の中で知らないものはない今までの連絡事項は全てユキを通して行われていただけでなくユキの「のっそりとして誠実」な人格は多くの人々の信頼を獲得していた。

ユキはブログで「ツルギを信ずるように、お互いがお互いを信じて、行動しよう」と言って、的確な指示を出した。

県庁所在地に行動を起すもの、国会周辺に行動を起すものなどの指図、割り振りは「的を得た」ものだった。

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