第38話

ツルギは、10万の人間でこの町を埋め尽くそうと思っていると言った。

人の力によって反対勢力を屈服させよう、この方法が正しいかどうか分からない。

一つの問題を提起しそれをうやむやにせず解決し改善する事が大切だとツルギは訴えた。

スポーツ観戦ではドームに5万人ぐらいの人が集まるのだから、関心が高まればこの町にそれぐらいの人数が集まっても不思議ではないとツルギは思っている。

今は物価高、ガソリンの高騰は家計を直撃している。この時期に一気に税金の使い方を含めた改革が必要なのだ。政治は停滞しマスコミは人目を引く問題ばかりに集中し視聴率稼ぎに忙しいとツルギは不満を口にした。

このままではいけないと考える人間はきっと居るはず、賛同者を集めようとツルギはみんなの顔を見ながら言った。

青森の高木しのぶや愛媛の高橋麻耶は地方の様々な問題を口にし不安不満を熱っぽく語った。集まった若者に共通しているのは将来に対する不安である。

その心に集まった若者たちは興奮し、自分達も立ち上がり地方社会にあっても中央の政治にも

興味を持ち改善に向けて立ちあがろうと声を上げた。

目標はこの町に10万人とツルギは声を大にした。

この呼びかけにみんなは熱っぽく反応した。

それぞれがそれぞれの地元で立ち上がり行動を共有しようと誓い合った。


辺りもすっかり暗くなり次回の打ち合わせはネットを利用して行う事で一致しそれぞれが帰途に着いた。

遠くから来た者も多いがそれぞれは都内の親戚やら友人の所に泊る。

残ったのはツルギと秘書の本多ユキである。

コーヒーを飲みながら話は始まった。

伝達方法を最大限に利用し徹底的に多くの人に伝えよう、と言うのはツルギ。

秘書のユキは「緻密な組織作り」を語った

二人の話は深夜に及び、尽きる事はなかった


経済の深刻さが増してゆくと平行して大衆の政治の意識も芽生え静かに変化をしていった。

「世の中が混乱の方向に行くことを不安に思う者」はツルギに反対し「日々の生活に不安を募らせる者」はツルギに賛同した。

経済的に恵まれた者の中にも未来に不安を感じツルギの改革に期待をする者も多かった。

今度の改革は確実に実行しなければいけないのだ。

人口18万のA市に10万人が集まるということは大変なことだ

混乱は明らかだが、その混乱も辞さないのである。

力を見せつけるのも一つだとツルギは思っている。


反対議員全員から討論会に不参加の通知あったがそれは予想していた通りである。

ツルギの目には参加者が日々その数を増やしていることを肌で感じた。ツルギの賛同者からはメールと郵便物が届けられた。

その数は加速度的といって良い。

行動日の6日前の8月1日、テレビはA市をめがけて多くの若者が集まるという情報を大々的に伝えた。

それは、ツルギが暗に扇動しているものだと伝えた。

テレビ・マスコミは一斉にツルギを非難した。

翌2日突然のニュースが日本を駆け巡る。ツルギ、脱税容疑で逮捕。

この容疑はツルギが理事長を務めるPUFF「未来に向けての平和活動基金」{Peaceful Activity for the Future Fund}の資金とツルギの個人の資産の関係を衝かれたものである


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る