第36話
ツルギは改革の意欲を高めて前を見据えた。
「議員定数の半減」を公約に掲げたが、それさえも出来ない自分に情けなさを感じていたが、
この悔しさをツルギはブログでその思いをぶつけた。
それに答えるように、社会のさまざまの階層の人間たちから反応が現れた。
石油は高騰し、税金は上がり、物価も上がる。年金不安。
給料は上がらない。
政治家、役人の無策振りが目立った。
20xx年の春。
「ニューワーカー」が姿を現す。
新労働者階級、新組織「ニューワーカー」は互いに手をつなぐことはしない。
組織はつくらない。
自然発生的にひとつの方向に進むのだ。
いったん事が起きると瞬時に組織が出来上がる。
組織に甘える者もいなければ、組織に頼る者もいない。
それぞれの意識は高く、意思は硬い。
そうなるほどに社会は深刻な状況となっていたのだ。
ニューワーカーのスローガンは「給料を上げろ」だけではない。
政治を変えよう、行政を改革しようと叫んでいる。
政治家に頼らず、役人にも頼らず、司法にも訴えず、断固として改革しようとしているのだ。
政治の荒廃と役人による税金の無駄遣いは国民の怒りを買っている。
今の政党には、頼れない任せられないと多くの国民は思っている。
長野でのスト以来、各地でストライキは起こった。
はけ口の無いストライキは社会不安を想像させた。
その年の暮れ、寝耳に水のように、突然と大豆、小麦の価格が暴騰した。
バイオ燃料や、世界的旱魃(かんばつ)などの異常気象が原因と見られている
中国農産物は、中国の国内需要を満たすために輸出量を減らさざるを得ない、という情報が流れた。
あれだけ毛嫌いしていた中国製品が急に貴重に見えてくるのだ。
手に入れられることのできる食料はどんなものでも、どこからでもほしい、と言う政策になった。
「羞じも外聞も無い」とはこのことだ。
こうなる事は予測できたはずだ。
あらゆる国が、自国の食料を自国でまかなう事に必死になり始めたのだ。
それに追いつかない日本の「政治」。
ツルギは「ニューワーカー」と高校生の政治グループに声をかけた。
政治を変えよう!
それに答えるように、多くの人々が声を上げた。
「ツルギをリーダーに、新しい政党を」。
インターネット上でさまざまな意見が熱く飛び交った。
ツルギもそれに対する意欲を見せた。
特に高校生のグループは積極的であり、新しい政党作りをツルギに迫った。
リーダーになるにしても、市長選挙での公約は果たさなければならない。
そうしなければ、ツルギに対する信頼を獲得する事は出来ない。
当然の事だ。
果たしていない公約は残すところ「議員定数の半減」だけである。
それは出来そうで出来ないものだった。
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