第35話
ツルギはスマホでアメリカの友人ステファンと話をしている。
それによると、アフリカのB国の友人のジニが自国の警察に逮捕投獄されたと言うのだ。
理由は、飢えて命を失う子供たちのために政府機関の食糧倉庫から食料を盗んだ疑いだ。
あのこころやさしいジニを思い浮かべてツルギは涙を溜めた。
この小さな市長さえうまく務まらない自分にジニを助けるゆとりさえなく、強くこぶしを握り締めた。
しかしできる助けはしなければならない。
ツルギは「ジニの友人のジミリに連絡を取ってみる」とステファンに伝えて電話を切った。
その場で、すぐにジミリへ連絡を取る。
10数年ぶりで「わたし」を覚えてくれているだろうかと不安になった。
同じ教室で席を並べたあの時、ジニのあの笑顔。
電話に出たジニは懐かしさとうれしさを一杯に表現して、ツルギを感激させた。
再開の涙も乾かないままにツルギはジニに様々な質問をした。
想像していたほど、悪い状況でもなかったので一安心である。
ジニの住むB国は希少金属が産出することで大国の注目する国となっている。大国は傍目を気にせず露骨な利権を奪い合っている。
自国の財産の何の恩恵を受けず一部の人間、一部の国が恩恵を受けるばかりである。
その国の貧しさは子供たちの命を飢えが毎日のように奪っていった。
ツルギは深く心を傷めた。
貧困の問題もツルギの大きなテーマであった。
ツルギの心は世界にも向かっている。
当面の援助としてツルギの「未来に向けての平和活動基金」{Peaceful Activity for the Future Fund}から日用品・食料の援助を送るとジミリに約束した。
手が空き次第そちらに行くとも伝えた。
貧困の問題は国によっては「待ったなし」なのだ。
日本は恵まれてはいるが未来は明るいとはいえない。
お金があるから食料を輸入できるのだ。
日本の食料自給率は30数%。
深刻なのは食糧の輸入が停止した時だ。最近の政情不安、異常気象は食料調達の不安定を予測させた。
もし、食料不安が起きたらどうするのか。どのようにして食料を賄(まかな)うのか。
出来なければ腹をすかせて地面に倒れ、目の前をアリの行過ぎるのを見ると言うのか。
アフリカのB国とどこが違うのか。
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