第31話

ある日、ツルギに対し警察が任意に、又内密に事情聴取がなされた。

容疑は「騒乱罪」である。

「騒乱罪とは、多衆が集合して暴行・脅迫を行うことにより公の平穏を侵害する罪である。」と法律にある。

今回の騒動がこの騒乱罪の中の、「多衆が集合して暴行・脅迫を行うこと」に当たるかどうかである。

ツルギは今回の件では全く関係していない。

しかし、「ある勢力」はツルギの影響力を大きく警戒し今のうちにその力を落とし込もうとその機会を狙っていたのである。

その疑いをかけることで充分な効果があるのだ。

内密であるはずのこの情報が、新聞に大きな見出しで載った。

恐らくツルギを一気に潰す気でいるのだろう。

いかにも、今回の騒動の原因がツルギにあると、世間に知らせる思惑がはっきり見える。

この気配を全国の高校の政治活動集団は充分に察知した。「未来」の指導者の飯塚亮太、他の「緑の風」の有沢レイや「青の立風」の高木しのぶ、そのほか四国の「緑の大地」、関西の「森の息吹(いぶき)」、関東からは「ブルーアース」などと連絡を相互に取り、対策を練った。

出た結論は「風の声」に同調し全国的な学校封鎖が実行された。

マヤの退学処分の撤回!

食料自給率の向上!

共通のテーマである議員定数の半減!

一見して取り留めなく思いつきのようなものであったがそれぞれが一定の要所をついているように見えた。

インターネットを通して全国に伝えた。

各学校とも在校生の7割以上の学生が封鎖に参加した。

これらの要求、テーマは若者自身の問題と捉えているからである。

数十年前の学園封鎖とはその数字が違う。内容も違っている

当時は、ごく一部の学生が封鎖を強行したのだ。

今はネット社会で力は一気に爆発する。

・・・・・・・・・・・・・・

話は移るが、

政府与党の黒幕と自称するA氏と最大野党のB議員。

面識の無い二人。

六本木の「名の通った」イタリアンレストラン。

そのコンパートメントルームで見るからに癖のありそうな顔を互いに背けながら相対している。

どちらが話を先に切り出すかの間合いが一種の緊張感を生み出している。

駆け引きが優先している。


A氏が話を切り出した

「今回のツルギと若者たちの関係は好ましくない」

つづけて

「60年安保、70年安保とは違う若者の行動だ」

B氏

「それは同感」

「今の我々は、確かに対立している、しかし利益は共有している。ツルギは我々の共通の敵といってよい」

二人は

目を合わせるように、頷いた。

ツルギの持つ影響力を恐れているのだ


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