第30話
解散の通告に従わなかったマヤには、退学通知書が送られた。
マヤの通う高校が私立と言う事もあって決定は早い。
その私立学校では、規約の中で政治活動を禁止している。
マヤは潔く退学を決めたが仲間はそれを許さなかった。何人か集まって、理事長室めがけてマヤの退学の取り消しを大声を上げて求めた。ここまでは高校生らしいやり方と言えた。
他県で、ある議員が「高校生のくせに・・・」と言った「ひと言」が高校生の政治活動の意識を目覚めさせたと言う出来事があったが、それと同じようなことがマヤのいる高校でも起こったのである。
理事長の一言が学生の不満に火をつけた。
「まわりの風潮に乗ってはいけない、政治活動と言うばかげた事をやってはいけない」と言ったのだ。この「ばかげた事」に学生は大きく反発した。
「ばかげた事をやらざるを得ない、窮地に陥れたのは誰か」と学生は声を張り上げた。
「大人がやらない改革を我々がやろうとして、それが何故ばかげた事なのか」と学生はこぶしを握った。
「マヤの退学要求の撤回」に応じない高校側に対しマヤの率いる「風の声」は学校封鎖という手に出た。
この学校封鎖は、昭和の時代に大学生が起したものと、やり方は全く同じものであった。
誰から聞いたり、指導を受けたりするものではなかった。
自然とこうなったのである。
驚いたのはその町その県だけではなかった。マスコミも驚いた。
「今どき」と大人たちは思ったに違いない。
自分たち大人を棚において今の若者は腑抜けだと思っていたのである。
こんなことが出来るはずが無いと思っていたのである。
「未来」のリーダーの飯塚亮太は、他の「緑の風」の有沢レイや、「青の立風」(あおのたちかぜ)の高木しのぶそのほか四国の「緑の大地」、関西の「森の息吹(いぶき)」、関東からは「ブルーアース」などと連絡を相互に取り、対策を練った。
出た結論は、「風の声」に同調して全国的に学校封鎖を実行することに決まった。
マヤの退学処分の撤回!
インターネットを通して全国に伝えた。
・・・・・・・・・・・・・・
マスコミは、何かをほのめかす様にツルギについて語り、それと今回の学園紛争を結びつけた
これを機にマスコミは若者勢力とツルギを一つの勢力とみなしそれと対立する位置に身を置くのである。
マスコミは益々ツルギを危険視するようになった。
国民は口ではマスコミに同調したが心の中は複雑であったいったい誰が社会の改革するのか?
国民は判断に戸惑っている。
ツルギに対して遠慮がちに物言っていたキャスターも判断力の無い若者を煽動しているとして強い口調で彼女を責めた
マスコミ関係者の多くも「社会は高校生の政治活動を認めないだろう」と安直に推測したからである。
マスコミの中には今回の騒動の責任はツルギにあるとしてそれを社会問題化して国民を煽りテレビに張り付かせ視聴率を稼ごうとするところもある。
国民の多くが、高校生の政治活動を認めないとすればそれら高校生と繋がりがあるツルギは公然と非難されるだろう。
あるテレビ局が日本全国に相当数の「ツルギ信奉者集団」がいることを調査しそれを番組化した。
この報道によって、ツルギを危険視する風潮が徐々に出来上がって行った。
あるテレビ局に至ってはその革新的な表の顔とは別に政府与党の最も右寄りの集団と手を結んだ。
そうして、ツルギを陥れようと謀を練り上げた。
それは、互いの利益のために・・・
公安関係は表立っては動いていないが、裏では活発に動き回っている
ここで何故、公安関係が動いたのか!
政府与党にとっても、野党にとっても、ツルギは共に相反する存在に見えるのだ。
ツルギの持つ国民的人気は既存の政党にとっては、「やっかいなもの」なのだ
それほどにツルギは若者にも人気があると言っていい。
「もしかすると、ツルギは、今の日本国の体制を根こそぎひっくり返すかもしれない」と不安視する者もいるのだ。
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