第26話

その後、地元に帰った亮太は、親の心配をよそにツルギの推し進める「市議会議員定数の半減」を積極的に訴え活動した。

しかし如何に大きな声で訴えてもそれに反応するものは少ない。

同じ高校生からは「自分たちの問題から大きくかけ離れている」と捉えられた。

同級生からは戸惑いの反応も見られた。

敬遠してその側を離れる者や参加したいと思っても回りを意識して行動できない者鼻で笑うような者などさまざまであった。

しかし、彼らの中には共通している「ある考え」「ある思い」があった。

それは「将来の不安」である。言葉で言い表す事の出来ない不安である。

それに火をつけたのは一人の県会議員の言葉である。

「高校生のくせに、そんな馬鹿な事をやるより勉強していろ!」の一言である。

この言葉は、インターネット社会で炎となって燃え広がった。

・​・・こんな社会にしたのは誰か・・・

・​・・えらそうに何を言うか・・・

・​・・こんな改革さえ出来ないで何を言うか・・・

大人社会が作り出した弊害。先送りされる国の負債。食料自給率の低さ。乱れた政治家の金の問題。


これを機に、飯塚亮太の前には多くの高校生が集まった。

仲間は次第に数を増やし組織としてかたちを整え始めた。

亮太は多くの仲間から迫られるように組織を立ち上げることになった。

その名は「未来」である。

これは、亮太が演説の中で頻繁に「共有する未来のために」と声に出していたものから取った。

この波は、この県だけで終わるものではなかった。

燃え広がる高校生の情熱は全国に広がった。

当然のように、ツルギの地元でも大きなうねりとなって伝わってきた。

それにあおられるようにツルギの改革も動き始めた。

亮太は全国にメッセージを送った。

「ツルギと共に」・・亮太が熱く燃えたのである。

この時点で、マスコミからは「ツルギを標的とする批判」が正面を切って姿を現した。

ツルギが未成年者である高校生を「扇動」しているというのである。

つまり高校生を「あやつっている」とキャスターは言うのだ

このキャスターは国民の動きには目ざとい。

目ざといだけで将来を思っているのではない、人気を得たいだけなのだ。

親の心配を煽(あお)るように「高校生を持つ親の不満」を連日、画面に流した。

「ツルギの大きな人気は悪い結果を招く」と暗示するような報道。

それにうなずき始める大衆。

ツルギの知らないところで大きな力が動き始めた

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