第24話

翌日、ツルギはステファンとあるホテルに向かった。そこで何があるのか、ツルギには知らされていない。

ヒマラヤスギとメタセコイヤの巨木が立ち並び、都会を感じさせない中を車は走りぬけた。

やがて白亜の建物が目の前に現れ車を降りた。

二人は語り合いながら、マホガニーの手すりと大理石の階段を上へと向かった。

硬く引き締まった絨毯(じゅうたん)を右に折れ白いドアの前に立った。

ステファンがドアを開けると、大きな拍手が一斉に鳴った。ツルギは一瞬びっくりしたが、顔ぶれを見て声をあげた。

留学時代の懐かしい顔ぶれがそこにあったのだ。

アフリカのA国の友人ジニ、ヨーロッパのB国のモリーなど、手を握り合い肩を抱き合った。

これは小学校の同窓会そのものである。

集まったのは、すべて女性。

にぎやかさはこの上も無い。

ひとしきり、近況を語り合った後ステファンが大きく声を出した。

「みんな静かにして」

ステファンの張りのある声に皆は注目した。

今日ここに集まってもらった趣旨は前もってみんなに伝えてあったらしく知らないのはツルギだけであった。

ステファンは続けていった。

・・短時間で相談したことではあるが、皆で決めた事をツルギに聞いてもらいたい・・・とツルギの方を向いた。

ステファンが言うには、ツルギが設立した「パフ PUFF」(未来に向けての平和活動基金)に、今ここにいる全員が参加協力したいと言うのだ。

突然のことで戸惑ったが、ツルギはうれしさのあまり涙を見せて喜んだ。

アフリカに住むジニは黒光りする肌と白い歯を見せながら「このままでは地球に未来は無い、何とかしなければ」と言った。

それぞれが世界の現状の危うさを訴えた。

「私たちはどこまで出来るかわからない、しかしできるところまでやろう」と中東のC国のムニラも言った。

ここに集まった女性たちは国に帰ればそれぞれが将来を嘱望される立場にある。ツルギにとってこの上なく頼もしい連中である

さまざまな国が抱える難しい問題を「自分たちが解決してゆくのだ」と、心に決めて語り合う仲間にツルギは身体(からだ)を熱くした

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