第23話

全てが順調に行くツルギの周辺に注意深くその成り行きを見つめる勢力も存在する。

形となって姿を現さないだけなのだ。

古株のテレビのキャスターたちの中にはわずかな目の表情で不満を表すものもいる。

自分をオピニオンリーダーと自認するキャスターはわずかに皮肉を効かせる。

また、一方ではツルギの人気の高さを懸念する政府関係者もいる


・・・・・・・・・・・・・・


莫大な印税による収入を元にツルギは、

「未来に向けての平和活動基金」{Peaceful Activity for the Future Fund

通称PAFF(パフ)と呼ばれる}を設立する。

ツルギは、金銭に関する環境のあまりの変化に、追いついてゆく事が出来ないでいる。

しかし、取り巻く時の流は彼女をどんどんと成長させていった

ここに至るまでには、色々な人物に相談し情報も収集し一気に設立までにこぎつけたのである。理事長はツルギ、事務長はユキである。

大金を手にして精神的な不安を隠せなかったツルギもこの基金の設立で、多少気分を楽にする事が出来た。

この事をアメリカにいる友人のステファンにメールで伝えた。


二週間後、ステファンはメールで合わせたい人がいるから是非、ワシントンに来てほしいと伝えた。

彼女の底抜けに明るい笑顔を思い浮かべた

急に昔の懐かしさが湧いてきてすぐにアメリカ行きを決めゴールデンウィークの5連休のうちの4日間をアメリカ行きに当てた。

宿泊はステファンの両親の強い勧めもあって彼女の自宅。


ワシントンの空気はおよそ15年振りである。

不安だった英語も前に勤めていた会社では海外事業部だったので意外とスムーズにいった。

ワシントンに到着当日の夜自宅の庭でステファンの両親からは大きな歓待を受けた。

「アメリカ国民を自らの命を顧みずに助け出してくれた事を、アメリカ国民を代表して感謝する」と言い、ツルギはステファンの両親に強く抱きしめられた。

ステファンの父親は上院の有力議員であったので報道陣の数もかなりのものだった。

ステファンの大きな家も報道陣で溢れた。

ツルギはコメントを求められ英語ではっきりと自分の思うところを述べた。

その姿がアメリカでは好感を持って伝えられいっそうの人気となった。

彼女は「サムライ ルギー」と呼ばれ、絶賛である。現地のテレビにツルギの姿が大きく映し出された。

その姿は美しく、多くの人のため息い。

その美しさとサムライ魂はアメリカ全土に知れ渡った。

日本人にとっても、アメリカ在留邦人にとっても大きな誇りとなった。

これを機に「サムライ」と言う言葉をあらためてかみ締める日本人も増えるのである。

現地はちょっとした「サムライブーム」といってよかった。

現地のマスコミの加熱ぶりはツルギを疲れさせた。しかし、それも無事に乗り切りその日はステファンと共に「心にあるがまま」を夜の更けるまで語り明かした。

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