第17話

その月も終わろうとするある日の夕方、

ツルギは携帯をいじりながら、事件のことを思い出していた。

今の日本、何か変?何だろう?

このままでよいのだろうか?

自分に出来る事は何だろう?。

いじめに合い、会社を辞めてからの短い間に、自分を取り巻く変化に戸惑いながらも、ツルギは自分の魂の内側から湧き上がるエネルギーを感じ始めた。

「何かをやりたい」とも感じ始めた。

やがて、「自分に何かが出来るかもしれない」と考えた。

こんなことを考えながらぼんやりと窓から外を眺めていると携帯が鳴った。それを手にして「ハーイ」と言ったその瞬間ツルギは喜びを顔一杯にあらわし、流暢な英語で興奮しながら話し始めた。電話の相手はステファン・ジョイスといってアメリカ留学中に空手道所で知り合った親しい友人の一人である。

その子の父親はアメリカの上院議員で国内でもそこそこに名の知られた人物である。ツルギのことを知るステファンの一家が、今回の事件に心を痛めると同時に、「ルギーよくやった」と賞賛の声を上げたのである。・・・・・ルギーとはツルギのニックネーム・・・

ステファン勇気に感動している、と伝えてきたのだ。

数分のテンションの高い会話が続いたが、ツルギは別れ際になって、涙を見せながら、

会う日を楽しみにしてると言って電話を切った。このステファンが将来ツルギが世界へ飛び出す時の強力な後援者となってゆくのであるが今は知る由(よし)もない。


八百屋のオヤジが紹介してくれた秘書の仕事もやりがいがありそうにツルギは思った。

小さな町の政治ではあるがそれに参加してみるのもよいと考えたのだ。

そう決心すると心も軽くなり、夢も広がり

一気に元気を取り戻した。

ツルギはオヤジにあらためてお願いに行った。

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