第15話

この事件によって、日本人は日本の司法を見つめ直す機会を与えられた。

・・・日本では、人を助けると、罪になる。何故なのか・・・

・・・法律通りに裁判のするならコンピューターでもよいのではないか・・・

・・・「裁判官はいらない!」・・・

さまざまな意見が巷にあふれた。


日本ではツルギは英雄であり、まさに時の人である。

何度とないインタビューを受けたのであるが、

ツルギは裁判に対して一切の批判も、自分自身の弁解もしなかったのである。

ただ一言、法律に従う、と答えた。

この態度も多くの日本国民の心を打った。

「日本はこのままではいけない」と、多くの国民は感じ取った。

時が経てば、事件の記憶も薄らいでいったが、

ツルギには、さまざまな仕事の誘いがあった。

人もうらやむほどの内容の仕事が山のように持ち込まれた。

しかし、

八百屋のオヤジに義理がある、といってツルギはすべて断っていた。

時が経ち、事件は忘れ去られようとしても、国民の深層心理の中で静かに息づいている事は間違いない。

この深層心理が将来、必ず顔を出すのである。

地元では当然、評判も高く、その名を知らない者はいない。

さまざまな人が行ききする店先に立つのは何かと問題があるということで、

八百屋のオヤジが市会議員の秘書の仕事を見つけてきた。

その市会議員はオヤジとは古くからの知り合いで、ツルギは何度か会った事がある。

かなりの酒好きだが、気性はツルギの大いに好むところであった。


時が経過しても、マスコミの取材の依頼も相当の数に上るがツルギは全て断っている。断れば断るほどツルギに対する取材には熱が入ってくるがそれは当然の成り行きのように思われた。

ひとたび、ツルギがテレビで話すとなったら、かなりの視聴率になると誰もが予想していた。

かかってくる電話も多い。止むをえず携帯の番号を教えた相手が多いという事もある。

メールも同様である。

中でも、テレビの出演以来が多いがその度(たび)ごとに断っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る