第5話

それでも、考えた。

その熱意がどこかに通じたのかも知れない。

美容院のことをぼんやり考えているうちに思い当たったのだ。若いときに美容院に勤めていた友人のこと。彼女だったらやってくれるかもしれない。

記憶では近くに住んでいるはずなのだが住所がわからない

古い年賀状を頼りに探すと、電車で数分、歩いて一時間ばかりの所に住んでいることが解った。

ここ数年、彼女との付き合いは無いが、互いに忘れ去っているわけではないので、年賀状の電話番号に電話をする事にした。太って丸々とした太い指が携帯のボタンをより小さく見せている。

女はそれをゆっくりと押した。呼び出し音が鳴るばかりでなかなか出ない相手にイライラしていると、ようやく「はい」と、低い声が聞こえた。


「私だけど、わかる?」と、この女は話しかけた

「わかるよ、どうしたの」

「そっちこそ、どうしてるの、久しぶりだね」と友人

「元気なさそうじゃない」

「いろいろあってさ」と友人

「別れたって聞いたけど」

と、長電話になってしまったが最後に用件を言うと「いいよ」と言う返事が返ってきた


三日後、友人のマンションに行くことになった。電車賃を節約すると同時に痩せる事も期待して、歩く事にしたがここ三日間ほど満足な食事をしていないので、足元が定まらない。

この空腹感は、この女に、「少し痩せたかもしれない」と感じさせた。

この「痩せたかもしれない」と言う感覚が、この女の心を明るくもした

・​・・この調子で行けば痩せるかもしれない・・と、

・​・・明日からは食事は抑えて、歩く事を日課にしよう・・・

・​・・きっと痩せられる!・・・

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