第4話


さて、

顔だけきれいにしたところでどうにもならないが、とりあえず化粧をする事になったが、この女にとっては久々の化粧である。

干からびたような、口紅をさし、かろうじて残っていた黛(まゆずみ)で眉を書き、試供品のクリームをぬった。

もうこれだけで、一歩女性に近づいたようにこの女は思ったが、確かに目元と口元に愛らしさが漂っていた。

化粧とは「ばける」と言うが、実にその通りかもしれない。口紅を引いただけで、これほどの自信をわきあがらせたが、これはこの女の性格の可愛らしさかもしれない。いや、素直な性格と言ったほうがよいかもしれない。

また、この「自信」も女性を美しく見せる大きなポイントに違いない。

次に、この女は考えた

・​・・・・メガネをコアンタクトにするとイイ線いきそうだ・・・・と

しかし、そんなお金があるはずもなく、アッサリと諦(あきら)めたが、このあきらめの良さもこの女の長所だ。

この太った身体は今すぐには、どうにもできないので仕方もないが、もっとひどいのがその髪型である。伸び放題のぼさぼさの有様(ありさま)で、それを輪ゴムで束ねただけ、と言う今どき見かけない髪形である。

この髪型だけでも、男も女も寄ってこない。これをどう解決するか。美容院にゆくのが一番いいのだが、水道も電気も止まるような状況なので、そんな金があるはずも無い。

しかしこの女は、必死で考えた

考えたところで、最後には「金がなければ仕方が無い」と言う結論に行き着くのだが・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る