第3話
そして、心でつぶやいた。
「やせよう!やせよう!」と。
次に頭に浮かんだ言葉は、
「きれいになろう!きれいになろう!」である。
考えは川の流れのように続き、結果として化粧は必要不可欠と思いつき、その巨体を鏡の前の椅子移動させ、この女はゆっくりと腰を下ろした。
しかし、その前はゴミ箱状態であり、化粧品らしきものは無く、化粧とは関係のない本や雑誌がうず高く積まれている状態である。
それを、不器用そうな手つきで整理し、何とか鏡台らしく回りも整えた。
それから、おもむろに、太った身体をゆすりながら、化粧道具や化粧品を手にしようと、引き出しと言う引き出しを探し回った。
その結果、
ようやく、干からびた口紅や試供品を、幾つか見つけ出した。
それを手にして勝ち誇ったような笑いを浮かべたが、それは如何に毎日を退屈に暮らしていたかを言い表していた。こんな物が二,三個見つかったぐらいでは何の状況の変化も無いのだが・・・
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