第33話意外な人物
丈さんに連絡するも、あの視線が気になっていた。
視線は犯人の一人かもし僕だけじゃなくて同級生も、先生方も危険な目に遭うかも。
そう思うと、電話でどう伝えたら良いのかすごく迷っていたんだ。
山本先生が、提出された常備薬の箱を開けたが、僕の薬はない。
当たり前さ、常備薬なんて提出していない。
「颯真さん。薬ないぞ。お母様の連絡先を登録しているスマホは、大原先生が持っているし、どうしようか。」
ー山本先生、ごめんなさい。それが狙いです。ー
登録されたスマホだと、母さんに連絡されてしまう。
担任の大原先生ではなく、山本先生と会ったから常備薬があるようにしたんだ。
薬がなければ、家庭に連絡をすることになるだろう。担任が管理している登録スマホが手元になければ、連絡先は口頭で伝えることになるから、丈さんのスマホに繋げることが可能ってわけ。
「先生。対処方法も聞きたいんです。口頭で番号言うので、繋いでもらっても良いですか?」
「そうだな。今日は、修学旅行初日、まだ六日あるしな。うん、颯真なら大丈夫だろう。いいか、皆んなには内緒だぞ。特別に許可するんだからな。」
ホームシック予防もあり、家庭との連絡は基本させてもらえない。
「ありがとうございます。もちろん秘密にします。」
先生に丈ちゃんの番号を伝えた。先に山本先生が対応するから、そこをどうしようかと困っていたら、
「蘭子お母様の圧は、ちょっとな。」
山本先生は苦笑いしながら、僕にすぐにスマホを渡してくれた。
「先生、その気持ちよくわかります。」
良かった。これで丈さんに番号にかけることを説明しないで済む。
ー母さんの圧の強さが、こんな場面で役に立つとは。ー
山本先生は少し離れたところに立っていた。たとえ小学生でも電話の会話を隣で聞くのはマナー違反と思ったのだろう。
ただ、お寺の中でも感じたあの視線が、僕を不安にさせていた。
ー丈さんに伝え方も考えないと。ー
もし盗聴器でもあったら、なんて思っちゃったからね。
丈さんは、見慣れない番号に不審そうに電話に出た。
「、、、はい。西園寺です。」
「颯です。今電話して大丈夫?」
「颯!どうした?修学旅行中だろ?何かあったのか?」
受話器越しにも丈さんの心配が伝わってくる。
「今ね、山本先生のスマホをお借りして、かあさまに連絡させたもらってるの。」
「颯?どうした?お蘭じゃなくて丈ちゃんだぞ。」
「うん。わかってる。かあさま。常備薬忘れちゃった、お腹が痛いんだ。いつもの『めめ』も事も心配で。だから連絡したんだ。」
「えっ、『めめ』?、、、。ハッ颯、何か見たのか?」
「うん。」
ーよし、これで伝わる。ー
「お蘭にかけてるようにしてるって事は、聞かれたらまずい、えっと、怖い状態にいるのか?」
「大丈夫。山本先生のお部屋からかけてる。先生もいらっしゃるよ。」
「、、、。先生以外に聞かれたくない状態ってことか?まさか盗聴?」
「うん。」
ーやっぱり丈さんはすごいや。ー
「そうか。『めめ』で、かなり危険なものを見たんだな。」
「うん。」
「近くにいる人物?」
「うん。」
「学園の関係者なのか!」
「違うよ。」
「颯。うん、理解した。心配するな今から向かう。それまで小学生らしくしてるんだぞ。」
「はい。」
本当に丈さんはすごい。僕を子供扱いしないでちゃんと受け止めてくれた。小学生らしく、、、か、危険なことはするなって事だね。
山本先生にスマホを返しながら
「まだ何日もあるから常備薬を届けてくれるそうです。かあさまは忙しいから、他の誰かに頼むそうです。それまでは、暖かくしていなさいと。」
「そうか。良かったな。どうする?風呂に入れるか?温まるぞ。それとも、痛いなら先生たちと後で入るか?」
「後でにします。良いですか?」
「もちろんだ。部屋だとうるさいな。ここで横になっていなさい。」
僕は時計を見て、少し考えた。
「一人だと寂しいから部屋に戻ります。」
「そうか。じゃあ先生と戻ろう。」
山本先生は、大丈夫かっと声をかけながら、僕の背中をさすってくれている。僕の嘘で心配をかけて申し訳なかったが、今は別のことで頭がいっぱいだった。
もし、あの視線が犯罪に関係している人物なら。
そして、僕が先生の部屋にいて、子供たちはお風呂に入って部屋に誰もいないと確認できる人物なら。
今、あの視線の持ち主は、僕たちの部屋にいるはずだ。
丈さんは小学生らしくしていろと、危険な事はするなとメッセージをくれたけど、確認せずにはいられない。
ー大丈夫、山本先生もいる。ー
部屋の扉を開けるとそこに僕のカメラを手にした畑中先生が立っていた。
えっどうして、畑中先生がいるの?
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