第13話 やっぱり面倒事に巻き込まれるようです。


「……さて、第二階層は一体どうなっているのかな?」



 単眼巨人サイクロプス の群れを倒した後、そのまま第一階層を踏破し、第二階層へとやってきた僕。


 普段と同じように、第二階層には広い草原が広がっているけど、そこにある空気がどことなく重い。

 加えて、草原自体は変わりないけれど、周囲に生えている木や湖が以前見た時よりも禍々しくなっている。これも恐らくは魔力の異常によって変化したものなんだと思う。


 普段ならせいぜいG〜E+ランク相当のモンスターしか出てこないけれど、第一階層と同じように、ここも恐らくはAランク以上のモンスターが出てくる。


 今回の目的はダンジョンの調査だから、一応どんなモンスターが出てくるのか、その傾向はどの様なものかを調べて鷲見すみさんに報告しなければいけない。



「うーん……、やっぱり魔力量が悪さをしているのか、第二階層の雰囲気も随分と変わってるね……」



:これが第二階層……?

:なんか……雰囲気があれやな

:てか、あんな禍々しい木あったか?

:湖もなんか凄い色だぞ

:普段はこんな感じじゃないよな?

:報道通り 異常事態 が起きてるんやな……

 


 僕がそう言えば、コメント欄の皆も様々な反応を返してくれる。色々な反応があるけど、大体のコメントが"実際のダンジョン異常"がどの様なものかを知って驚いているようなコメントが多い。

 まぁ、普段からダンジョンに潜っている人でもない限り、"ダンジョンの魔力異常"と言われてもピンと来ないだろうしね。

 どれだけ危険だと言われても、実際に現場を見てみないことには分からない。

 鷲見すみさんが今回僕に配信を頼んだのは、ダンジョンに潜らない一般の人達にその危険を伝えるため、というのもあるんだろう。

 

 そんな感じで、たまにコメント欄のみんなと会話しながら第二階層を散策していると早速『𨷻入者イレギュラー』が現れた……と思ったら、僕から数メートルほど離れた場所に物凄い勢いで"何か"が着地した。

 その際に巻き上げられた砂や土で視界が覆われ、相手がどんな奴なのかが分からない。



「──────!!!!」


「……っ!開幕早々お出迎えとはね!もうちょっと優しくしてほしいんだけどな!」



 そのまま僕が立っている場所に居続ける訳にもいかないので、直ぐ様その場から飛び退く。

 恐らくは敵がいるであろう場所からさらに数メートル距離を取り、愛刀『コガラシ』の鞘に手をかけ睨みつける。


 しばらくして煙が晴れてくれば、僕を襲いに来た敵の様子があらわになる。



「『幽霊騎馬兵デュラハン:カヴァリー』………。なんでランクS+相当のモンスターがここにいるのかな……?はぁ……」



 煙が晴れて、相手が誰かと思ったら、S+ランクの『幽霊騎馬兵デュラハン:カヴァリー』だった。


 幽霊騎馬兵 は中身がない鎧だけのモンスターで、同じく中身が無く鎧だけの馬に乗っているのが特徴のモンスターだ。


 両手には大剣が握られていて、馬上から破壊力抜群の攻撃を振り下ろしてくる。馬に乗っているという利点を活かしてこちらを翻弄し、ヒット&アウェイ で攻撃してくる厄介なモンスターだ。

 モンスターだからなのか乗っている馬の速度は生物の枠を外れていて、最大時速120kmというフルスピードの自動車並みの速度でこちらに迫ってくる。


 先程戦った 単眼巨人サイクロプス よりも体躯は小さいが、破壊力では 幽霊騎馬兵デュラハン:カヴァリー に軍配が上がる。要は単純な 単眼巨人 の上位互換。流石S+ランクと言われるだけはある。


 そして、幽霊騎馬兵デュラハン:カヴァリー以外にも 幽霊騎士デュラハン:エリミスタ幽霊弓士デュラハン:ルーク など、様々なタイプが存在している。

 主に使う武器と戦闘スタイルで分類されているけど、種類によってはAランクに指定されていたりと結構強さはバラバラだ。


 さて。そんな事を考えている内に、幽霊騎馬兵デュラハン:カヴァリー がこちらへと向き直り、転瞬。その不可視の両手に握られた大剣を振りかざし、馬をたくみに操ってこちらへと肉薄してくる。



「─────!!」


「フッ────!」



 直ぐさま手を掛けていた『コガラシ』を抜刀し、その勢いのまま相手の大剣へと打ち付ける。


ガギィンッ!!!


 鋼と鋼を打ち合わせた時特有の甲高い音が響き、太刀を握る僕の手にはかなりの衝撃が伝わってくる。

 そうして太刀と大剣を打ち合わせた姿勢のまま、お互いがさらに力を込めて相手を斬り裂こうと鍔迫り合う。

 

 キィンッ!!


 互いにこのままでは埒が明からないと考えたからなのか、どちらからともなく手にした獲物を振るって相手を吹き飛ばし、お互いが最初の立ち位置へと戻った。



「……まったく、相変わらず馬鹿げた力してるね……本当に」


「─────!」



 僕の言葉を聞き終わる前に、幽霊騎馬兵デュラハン:カヴァリー は大剣を構える。

 それを見た僕も『凩』を構え、再び眼前の敵へと突貫する。



「……今度はこっちから行かせて貰うよ!」


「────!!!!」



 発声器官が無い為なのか、声にならない叫び声を上げてから幽霊騎馬兵もこちらへと突っ込んで来る。


 互いに地を蹴って相手へと肉薄し、そのまま高速で切り結んでいく。



「────ハッ!」


「──────っ!!!!」



 幽霊騎馬兵デュラハン:カヴァリー は、名前からも分かる通り物理攻撃が効かない。

 そのことから、一見今 僕が行っている行為幽霊騎馬兵と切り結ぶ は意味が無いと思われるだろう。


 幽霊騎馬兵 には魔法や技能スキルを用いた攻撃が有用だけど、僕の太刀は常に僕自身の魔力を纏わせ続けたおかげか既に『魔剣』と呼ばれるものへと変化していた。

 この状態になると、武器は常に魔力を帯びている状態になるので、"物理攻撃"ではなく"物理魔法攻撃"となって実体が無い相手にもダメージを与えられるようになっている。

 そして帯びている魔力は武器所持者自身の魔力なので、武器所持者の魔法に合わせて武器の方の魔力も勝手に変化してくれる。


 というかした。


 というのも、昔この手の相手にかなりの苦戦を強いられる事がかなりの数あったので、もう"物理攻撃と魔法、両立させれば解決するかな?"と考え自身で作りだしたのがこの愛刀『コガラシ』だ。

 他にも作った刀は多くあるけど、『コガラシ』が初めて作ったものであるため愛着が強い。


 なぜこんな事を話すのかと言うと、初めて作った刀となれば、勿論使ということになる。

 つまりは、一番僕自身との親和性が高い。他の刀だと耐えられないような出力でも『コガラシ』は余裕で耐えてくれる。


 要は、特異技能ユニークスキル使という訳だ。


 まぁ他にも技能スキルの過剰な出力に耐えてくれる武器たちは結構あるけど、それを今配信している中で見せるつもりは無い。

 勿論『コガラシ』よりも性能がいいものはあるけど、"汎用性"という面で見たら『コガラシ』は全属性の出力にかなりの高水準で耐えてくれるので重宝している。



「……『燐火蒼焔ヴァトラ』、『電霆 霹靂神フォルレミネ』」



 二つの特異技能ユニークスキルを発動すれば、僕の身体と太刀は蒼炎に。そして更に、蒼炎へと変化した僕の体には、生身の人間が触れたそばから炭化する程の電圧を持った紫電が走る。


 その状態のまま、蒼炎を帯びて燃え盛っている『凩』に紫電が迸る。

 超高温の焔と超高電圧の紫電が混ざり合うように太刀と一体化して、あまりの負荷に時折小さな爆発やアーク放電を引き起こす。

 混ざり合った焔と紫電によって、『凩』が明るい紺藍こんあい色へと変化する。


 配信では使ったことの無い特異技能ユニークスキル電霆 霹靂神フォルレミネ』。と言っても、まだ一回しか配信した事ないけれど。

 さておき、この『電霆 霹靂神フォルネミネ』は文字通り雷や電気を操る技能スキルだ。

 雷撃や纏いなど簡単なものから、電荷付与やプラズマ発生、脳や体に電気を流して活性化及び同化させたり、逆に相手に電気を流して体を動けなくするというのも出来る。

 さらに言えば、『燐火蒼焔ヴァトラ』や『冱による氷蝕フォルストゥ』などの他の特異技能ユニークスキルと合わせる事で、指数関数的に威力を上げたり操作性をあげることが出来る。


 前に『燐火蒼焔ヴァトラ』が僕の持つ技能スキルの中でTOP3に入るぐらいには攻撃特化だと言ったけど、操作性や利便性、応用の幅とかも考えると『電霆 霹靂神フォルレミネ』の方が上に来る。

 技能単体の火力では『燐火蒼焔ヴァトラ』に軍配が上がるけど、他の技能と組み合わせるなら『電霆 霹靂神フォルレミネ』の方が威力は高い。


 さて、長々と説明したけどこの技能を視聴者の皆に見せる訳では無い。


 ……「でも配信に映ったんじゃ?」と思う人もいるだろう。


 そこら辺はもちろん対策している。具体的には、この前使った最上位技能エクストラスキル疑惑の迷彩ダウフラージュ』と『電霆 霹靂神フォルレミネ』の併用兼応用で、カメラに移る映像を誤魔化している。

 配信を見ている人達には、僕が『燐火蒼焔ヴァトラ』だけを使っているように見えるだろう。

 そしてカメラ自体に細工している為、この場に直接来ない限りは誰だろうと細工を見破ることは出来ない。


 ……ここら辺で誰にしているのか分からない説明は終わりにして、さっさと『幽霊騎馬兵デュラハン:カヴァリー』の事を倒してしまおう。

 いつまでもこうして思考しているような暇は無いしね。

 


「……よし。それじゃあそろそろ先に進ませてもらうよ。

────『鳳凰、殷霹の一太刀エグゼ・アレスタリア』」



 転瞬、紫電と蒼炎が足元で過負荷によって爆発を引き起こし、久遠の体が押し出される。

 技能スキルの応用で周囲の空気に含まれるイオンに高電圧を掛け、空気の流れを作り出し凄まじい速度で 幽霊騎馬兵デュラハン:カヴァリー へと迫る。

 それと同時に、久遠は自身の体を雷へと置換し物理抵抗を限りなくゼロにする。

 

 音速を優に超える速度で、眼前に佇む幽霊騎馬兵へと肉薄し、すれ違いざまに太刀を振るう。



「─────!!!」



 幽霊騎馬兵 もこの技は危険だと感じたのか、周囲に濃密な魔力を撒き散らし久遠と相対する。

 その様は、発声器官が無いのにも関わらず裂帛れっぱくの気合を上げている様に感じる程の、凄まじい気迫であった。


 そうして、二人の獲物が交差した瞬間。


 久遠が通って来た道は空気が膨張し、轟音を響かせ、幽霊騎馬兵 が振るった大剣は、込められた魔力が大爆発を引き起こした。

 結果として、周囲には落雷が落ちたと錯覚する程の轟音と稲光、爆音が響き渡る。


 久遠は 幽霊騎馬兵 の背後へ位置し、幽霊騎馬兵 は久遠の背後に位置し、互いに斬り合った体勢のまま残心。


 蒼炎と紫電による轟音が響き渡る中、幽霊騎馬兵 はその身を焼かれ崩れ落ちた。



「……ふぅ」



 その様子を確認した久遠は一つ息を吐く。

 そして自身の体を見回し、何も異常が無いことを確認してから雷へと変化していた自身の体を元に戻す。

 それと同時に技能スキルを解除し、カメラドローンへと向き直る。



「……やっぱり、これは結構体に負荷が掛かるね。もっと鍛えなきゃ……」



 配信を見る視聴者達のことは後回しにし、先程自分が行った戦闘の分析を始める。


 今の攻撃、威力と精度は問題無いと思う。

 だけど、まだちょっと体に負荷が掛かっている感じがするから制御の部分が課題かな?

 まぁそれは今後鍛えていけば十分克服出来る物だ。これからも頑張って行こう。


 ……って、分析するのはいいけど今は配信中だった。視聴者の皆を放置したまま進むのは不味いだろうし、一応何か話さないと。



「……えっと、放置しててごめんね。配信中なの忘れてた。……にしても、幽霊騎士デュラハン系のモンスターとは久々に戦ったけど、異常事態のせいなのか大分強化されてたね」



:スゥーッ………

:………

:………

:いや……………

:ねぇ………?

:これは……………

:ちょっと……



 久遠がカメラに向けて話しても、あまり反応はかんばしくない。そのどれもが、若干腫れ物に触るような反応ばかりだ。

 久遠がその事に疑問を覚えて首を傾げていると、視聴者達はようやくまともな反応をし始めた。



:いやあの、首傾げないで貰えます?

:自分がどれだけの事をしたのか自覚がおありでない?

:少なくとも人間やめてて草

:S+ランク一撃は流石に人間辞めてる

:人間のフリしたなんかだろお前

:【悲報】Cランク探索者ワイ(25)もう探索者は辞めて実家の家業を継ぐことを決意する。(というのは建前で年下がこうも優秀だと泣きたくなったので実家に帰ります)

:探索者ニキにはまじで同情を禁じ得ない

:探索者ニキの事、涙無しでは語れないね……



 いや、少なくともまともな反応をしている者は少ないようだ。

 そのどれもが、久遠の強さに対してドン引きしている物ばかり。

 ……これからしばらくの間は、久遠が人間扱いされることは無いであろう事が分かる。


 えぇ……、なんかコメント欄見たら酷い言われよう。いつも通り戦っただけなのになぁ。

 いくら相手がS+ランクのモンスターだからって、ここまで言われる筋合いは無い……と思う。……無いよね?


 というかそもそも、深層や更にその下の層に潜るなら、

 先程戦った 幽霊騎馬兵デュラハン:カヴァリー なんて、ここより下の階層と比べれば"下の下"位の強さだ。

 僕としては、出来れば将来ダンジョンを踏破してみたいと思ってるから、本当にのだ。


 ……というかそろそろ、僕の事を好き勝手言うのはやめて欲しい。なんだ「人の皮を被った化け物」って。僕はちゃんとした人間だ。



「……僕の扱いが酷すぎない?失礼な、ちゃんとした人間だよ僕は。」



:ごめんなさい……

:そうだぞ、久遠はただ化け物並みに強い人間だぞ。種族的には人間なんだから失礼なこと言うな。

:↑お前も大分失礼では……?

:ていうかその……

:普通にムッとした顔が可愛いというか綺麗というか

:それな

:まじで美形なんだなぁ、と改めて思うわ

:これが格差社会



 …………大半の視聴者のみんなが関係ない話ばかりしている。さてはこの人達、僕の話聞いてないな?はぁ……



「……まぁいいや。それじゃあ、いつまでもお喋りしてる訳にもいかないから、さっさと次の階層へと進んじゃうよ」



 そう言い彼は次の階層へと歩み始める。この階層に来るまでの道中と同じように、視聴者達と雑談しながら下の階層へと降りていくのであった。



──────────


───────


────



 一つ降りて第三階層。


 久遠は、またもや強化された『𨷻入者イレギュラー』と相対していた。



「今度は 幽霊騎士デュラハン:エリミスタかぁ……やっぱり高ランクのモンスターが多いね」



 そうして彼は 幽霊騎士 とも戦う。

 勝利した後は、軽く分析してから視聴者と雑談、その後次の階層へと向かう。



────────


──────


────



 そうして、第四階層・第五階層・第六階層……と攻略していき、久遠は遂に第十階層へと辿り着いた。


 ダンジョンでは一般的に、十階層ごとに『階層主フロアボス』と呼ばれる強力なモンスターが存在している階層がある。


 そして、久遠がいる階層は第十階層。つまり、『階層主フロアボス』がいる階層だ。



「さて……、フロアボスが居る階層まで来た訳だけど、皆はどんな感じになってると思う?」



:なんかやばそう(小並感)

:ここに来るまでに出てきたモンスター大概高ランクだったからなぁ……

:フロアボスなら、めっちゃ強いモンスターとか出てくるんじゃない?

:ぶっちゃけ俺らからしたら危険だという事しか分からんな

:それはそう

:取り敢えず久遠は気を付けてくれよ



 コメントの皆は、強いモンスターなのでは?という意見が大半だ。ぶっちゃけ僕もそう思う。ここまでの道のりでは、ほとんどがA+ランク以上のモンスターばかりだったし。


 改めて考えても、今回の"迷宮災害ダンジョンカラミティ"はかなり危険な部類に入るだろう。何せ、ランクE相当のモンスターしか出ない階層でAランクが出現するのだ。

 歴史上でも、上から数えた方が早い位には危険な事態になると思う。


 まぁとにかく、とっととフロアボスを倒してなるべく早く迷宮災害ダンジョンカラミティを解決しなきゃいけない。


 そうして久遠は、第十階層への扉を開いていく。鋼鉄のような材質で出来ているその扉は、ギギギ……と重い音を立てながらゆっくりと開かれていく。

 少しして扉が開ききれば、中からは濃密な魔力が溢れ出す。


 完全に開かれきった扉を通り、警戒しながら『階層主フロアボス』のいる階層中心へと進んだ久遠。


 そうして中心に目を向ければ。



氷冰竜アイスドラゴン……少し前にも戦った記憶があるなぁ……」



 そう。久遠が世間で有名になる原因となった『氷冰竜アイスドラゴン』が、久遠を品定めするかのように見つめていた。


 うーん……一体どんなモンスターが出てくるかと思ったらまさかの『氷冰竜アイスドラゴン』だった。


 僕がバズった時にも倒したなぁ……。


 にしても、 氷冰竜アイスドラゴン か。

 正直、つくもさんの配信に映った時と同じように倒すだけだから、これといって問題は無い。多少驚いた程度。


 ……あまり時間をかける訳にもいかない。

 こうしている間にも、鷲見すみさんが苦労しているだろうしさっさと倒してしまおう。


 そうして、つくもさんの配信の時と同じように、技能スキルを発動して太刀を抜く。

 太刀を構え、しっかりと地面を踏み締める。


 そうしてお互いに睨み合い、一陣の風が吹いた瞬間。


 直ぐ様踏み込んで飛び出した僕は、太刀に炎を纏わせ叫ぶ。



「烽火連天」



 すれ違いざまに 氷冰竜アイスドラゴン の腹に太刀を突き刺せば、物凄い勢いで腹部から炭化していく。



『Gyaoooooo!!!』



 氷冰竜 は凄まじい断末魔を上げながら、ものの数秒で絶命した。



「運が悪かったね。僕、炎での攻撃は得意なんだ」



 既に大部分が炭と化した 氷冰竜 に、誇るように久遠は言う。

 彼の言う通り、つくも 雫 の配信で既に瞬殺された経歴のある 氷冰竜アイスドラゴン では久遠を止める事など出来なかった。



:これは……

:なんというか……ご愁傷様?

:相手が悪かったなw

:そういえば、こいつしずくちゃんの配信でアイスドラゴン瞬殺してるんだった

:【悲報】ドラゴンくん、見せ場なし!

:草



 さて。フロアボスも倒したし、次の階層へと進まなきゃな……


 と、久遠がカメラドローンへと振り向こうとした矢先。


 突如として、ダンジョン全体が揺れ始めた。



「……揺れてる?一体なんで……ってまさか!」



 不思議そうな表情だった久遠だが、何かに気づいた瞬間、自分が今居る階層の隅へと目を向けた。


 ────そこには、次第に揺れと共に大きくなる亀裂がそこら中に存在していた。



「よりにもよって『迷宮災害:構造変動ファヴェラン』か……!」



 『迷宮災害:構造変動ファヴェラン』。

 それは、ダンジョン内の魔力異常などによりダンジョンの構造が変わってしまうという物。

 この『迷宮災害ダンジョンカラミティ』は、歴史上でも最も多くの死者を出している程の物だ。

 これまでも様々な人物が巻き込まれてきたが、生還した人物は世界中の国含めてたったの十人。巻き込まれたそのほとんどが、日の目を見ることも叶わず死亡している。


 それが発生したということは、それ程までにこの【零の迷宮】には魔力が溜まっていたという事だろう。


 そうしている間にも、周囲の亀裂はどんどんと広がっていく。



:おいおいおい!

:これやばくねぇか!?

:久遠今すぐ逃げろ!!

:ファヴェランはシャレにならん!!

:逃げて!!

:逃げてくれ久遠!



 配信を見ている視聴者達も、この 構造変動ファヴェラン がどれ程危険なのか理解している為、口々に逃げろと叫ぶ。


 だが、迷宮は容赦なく牙を剥く。


 くそっ……!駄目だ、もう間に合わない!

 今から走ったとしても、もう既にダンジョン全体の構造が変わってきている!

 もう既に逃げる術は無い!


 ……ダンジョンの構造が変わっても、恐らく僕は平気だ。

 だけど、もしまで飛ばされたとしたら……!


 頼む……!以外の階層に……!!



「くっそ……!」



 そして久遠は、大きくなった亀裂の割れ目へと落ちていくのであった。



─────────────────────



 はい、どうも作者です!

 今話もお読み頂きありがとうございます!


 そして、まさかの今回約7700字!かなり長くなっちゃいました。

 いやぁ……書くのが止まらず気づいたらこんな事に。

 楽しんで頂けたら良いのですが……

 今回ばかりは反省ですね!


 それと、久遠のイメージ図を作成しました!


https://kakuyomu.jp/users/Sanerasann/news/16818093082498151701


https://kakuyomu.jp/users/Sanerasann/news/16818093082498118307


https://kakuyomu.jp/users/Sanerasann/news/16818093082498721862


 良ければ近況ノートからご覧下さい!


 イメージとしては、話の中で久遠が化け物扱いされていた辺りのジト目を意識してます!


 では、あんまり長くなりすぎてもあれなのでこの辺で!


 次回の更新でお会いしましょう!


 以上、作者からでした!

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