737文字の反逆者(一般書架)
すぱとーどすぱどぅ
反逆
僕たちは奴隷だ。
廃棄工場のような油のにおいと食べ物の腐ったにおいが立ち込めているこの場所は、僕たちが飼われている食品工場だ。
ゲロのようなものを一斗缶の中に詰め、お客様に売る。
これが僕たち、奴隷に与えられた使命であり、生きる価値。
だけど、それも今日で終わる。
何度も何度も通った食堂への通路を抜けると、食堂に出る。
食堂には僕に似たたくさんの子供たち。
その全員が、ガラス片を机の下で握りしめ、勝負の時を待っていた。
「おめええらぁぁあ!さっさとくえぇぇぇ!」
ガマガエルのような顔をした工場長がそう叫ぶ。
――怖い。逃げだしたい。
そんな恐怖も今日で終わる。
僕は立ち上がると、ガラス片を両手で構え、工場長へ走る。
「てめえぇ!」
工場長の鞭が先に僕の頬に届き、僕は無残にも床に倒された。
――大丈夫。僕だけじゃない。
後ろから、左から、右から、前から、下から、上から。
わき腹から、下腹部から、また下から、つま先から、膝先から、お尻から。
無数の刃物が降り注ぐはずだから。
―――しかし、そんな未来は来なかった。
ぼくの信頼していた友達も、反逆に賛成した仲間もガラス片を向けた相手は“ぼく”だった。
後ろから、左から、右から、前から、下から、上から。
わき腹から、下腹部から、また下から、つま先から、膝先から、お尻から。
無数のガラス片によって体をズタズタにされた僕は、食堂の床に倒される。
――そうか。この工場は、反逆者を見つけるための工場だったんだ。
あの一斗缶に入れられた生ごみのようなにおいの物体は、反逆者の肉、臓器、髪の毛、指の爪、目玉、指がガラスの破片によってズタズタにされ、なんだか分からなくなったもののなれの果てだったんだ。
気付いた時にはもう遅い。
これが、僕たちに残された最後の希望だったのだから。
737文字の反逆者(一般書架) すぱとーどすぱどぅ @spato-dospado
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