第10話 竜とマシロ

 勇者さまが、魔物を数体同時に斬りつける。

 斬られた魔物は、あっという間に煙となって消えていく。

「これで、15体……まだまだいるな」

「こっちは10体です。やはり、近距離戦は厳しいですね」

 勇者さまとキョウヤさんが、肩で息をしている。  

 いや、2人とも近距離にしては、めちゃくちゃ倒してますよ?

「ホマレくん、広範囲攻撃いけるか?」

「いけますけど、2人に離れてもらわなきゃできません」

 キョウヤさんの質問に答えると、2人は目を合わせて、同時に魔物から距離を取る。

 それを確認して、この場に合った魔法を探す。

 水、炎、風…………

「――ああもうっ、なんでもいいや! 轟け、ブリッツシュラーク!!」

 ピシャーンッ! と、雷が落ちる音が響く。

 魔物たちが、一気に煙となった。

 あとは、数えられるだけだ。

「ほ、ホマレくん……すごいね」

「さすが広範囲攻撃! 効率がいいな!」

 驚くキョウヤさんと、喜ぶ勇者さま。

 そんな2人に申しわけないけど……。

「あとは、お願いします」

 オレは杖を第三の足にして、身体を支える。

「どうしたんだい?」

「魔力消費エグいの、すっかり忘れてました」

 あの呪文を唱えたのは、久しぶりだ。

 最後に唱えたのは、たしか学校での課外授業のとき。

 あのあと、疲れて眠りこけちゃったんだ。

 あのときに比べると魔力はかなり増えたけど、コロシアムに来る前に、飛行魔法とか使っちゃったから……。

「ありがとうな、ホマレ。残りは俺たちに任せろ!」

 勇者さまが、グッと親指を立てた。

 本当に申しわけない。

『効率がいい』って言ってくれたばっかりなのに。

「行くぞ!」

 勇者さまとキョウヤさんは、魔物に向かって走る。

 そして、とうとう全員倒した。

「よし……!」

 ここに残った魔物は、マシロに任せた竜だけだ。

「マシロ――、……?」

 勇者さまはマシロに何か言おうとして、首を傾げた。

 マシロは竜の前に立って、神様にお願いするみたいに、目を閉じて手を組み合わせている。

 竜が攻撃したら、一撃でやられてしまうだろう距離だ。

「…………」

 マシロは、ゆっくり目を開いた。

 そして、竜に手を触れる。

「怖かったね。でも、もう大丈夫だよ」

 心なしか、竜はマシロに心を許しているように見える。

「まっくんのところに、一緒に帰ろう?」

 まっくん……って、誰だ?

 あの竜を、マシロは知っていたってことだよな?

 さっき聞いたときは、「ううん」って答えてたけど……。

 何か言えない事情でもあったのだろうか。

「おいで」

 竜から、さっきまでとは比べ物にならない魔力を感じる。

 そして、竜は――小さくなった。

 おそらく、魔法で自分の身体を小さくしたんだ。

 そういう魔法があると、本で読んだことがある。

「キュー」

 可愛らしく鳴いて、マシロの胸に飛び込んだ。

 さっきまでの竜の面影がない。

「そっか! 来てくれるんだね!」

 マシロは、顔いっぱいに笑顔を浮かべた。

 それから、勇者さまを振り返る。

「勇者さま、お仕事終了です!」

「ああ。すごいぞ、マシロ!」

 勇者さまは、ニッと歯を見せて笑った。

 と、ほぼ同時に、ワー! という歓声と拍手が聞こえてきた。

 そ、そういえば、ここってコロシアムで観客がいたな……!

 あんまり必死だったから、忘れていた。

「キョウヤ、良い身のこなしだったぞ!!」

「剣士のあんたもなー!」

「竜を手懐けてしまうとは……!」

 勇者さまとキョウヤさんを称賛する声が多く聞こえる。

 マシロを褒める言葉も、少なからず聞こえてきた。

 その中に、オレに対するものはない。

 やっぱり、魔法使いは嫌われてるんだ……と思ったときだ。

「見直したぞ、魔法使い!」

 そういう声が小さく、でもハッキリと聞こえた。

「良かったな、ホマレ」

 勇者さまが、オレの肩に手を置く。

「……はい」

 オレは小さくうなずいた。


*―――――*


 作者のねこしぐれです。

 話がグダグダになってしまいました。

 次話あたりから新章の前準備に入ります。

 よろしくお願いします(_ _)

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