第4話 家族と仲間

 両親と再会した。

 体感的には初めて会ったようなものだけど、赤ん坊のころに育ててもらっていた事実があるので、再会としておこう。

 二人の名前は、女性がレイナ、男性がヒロと言うらしい。

 二人が名乗ったため、勇者さまとマシロも自己紹介をした。

 彼らは快く家に通してくれた。

 家の中は、なんだかホッとする匂いがした。

 二人は出かける予定だったらしいが、オレが来たからと、予定を取りやめてしまった。

 そこまでされると、さすがに申し訳ない気持ちになってしまう。

「みなさん、よく来てくださいましたね」

 レイナさんは、オレたちにお茶を出してくれた。

 勇者さまとマシロいわく、オレとレイナさんは顔が似ているらしい。

 ということは、やっぱり家族だよな……。

 でも、どうしても実感がわかない。

 初めて会った赤の他人みたいだ。

「あ、お茶……。わざわざ、ありがとうございます」

 マシロが、お礼を言う。

「旅は大変だったでしょう?」

 レイナさんが聞くと、勇者さまがほほ笑んだ。

「そうですね。しかし、途中でホマレに出会って、楽しく話をしながら旅ができました。……とはいっても、ホマレと会って、まだ半日ほどしか経っていませんが」

「あら、そうなんですね。でも、勇者様が楽しかったようで、何よりです」

 レイナさんは、勇者さまに笑顔を向ける。

「レイナさん、ちょっといいかい?」

 ヒロさんが、レイナさんを呼んだ。

「はーい。みなさん、ごゆっくり」

 レイナさんは、ヒロさんの元へいなくなった。

 残された3人。

 マシロが、大きく息を吐いた。

「はぁ……。緊張した」

 勇者さまも、深くうなずく。

「優しい人で良かった」

 オレも、ちょっとホッとした。

 怖い人じゃなくて良かった。会ってすぐ、受け入れてくれて良かった……って。

「ホマレは、このままここに残るのか?」

「えっ?」

 勇者さまの質問に、オレは困惑の声を上げた。

「年齢としては、大人の国に残っても問題ない。このまま、家族と一緒に生きてもいいんだぞ」

「……」

 家族と生きる――か。

 これまでも、『家族』と呼べる人がいなかったわけではない。

 オレを育ててくれたお爺ちゃんや、子どもの国で「また会おうな」って約束した親友もいる。

 だから、『家族と生きること』は、これまでもしてきたつもりだ。

 ……『家族』が何か、よくわからないけど。

『家族』って、ずっと一緒に暮らしてきた人のこと? それとも、血がつながっている人?

「勇者さまは、〝家族〟って何だと思いますか?」

 オレは、勇者さまにそう聞いた。

 勇者さまなら、知ってると思ったんだ。

 でも……

「……そうだな。俺には、わからない」

 勇者さまは、首を横に振った。

 勇者さまが、あまりに寂しそうな、悲しそうな顔をするから、申し訳ないことを聞いてしまったと思った。

「あ……そう、ですか。すみません」

「いや、いいんだ」

 変に重たい空気が流れる。

 そんな空氣を吹き飛ばすように、マシロが明るく言った。

「わたしは、〝家族〟になるのに理由はいらないと思う!」

 予想外の言葉だった。

 オレは、呆気にとられる。

「血がつながっていても、家族じゃない人もいる。血がつながっていなくても、家族だって人もいる。だったら、家族に理由は必要ないと思うの」

 家族に、理由はいらない。

 マシロのその言葉が、ストンと腑に落ちた。

 そっか。理由なんて、いらないんだ。

「お待たせしました」

「待たせてしまって、すみません」

 レイナさんとヒロさんが戻ってきた。

 オレたちは、会話を中断する。

 ヒロさんは、オレを見つめる。

 心配そうに、不安そうに。

 重たそうに口を開く。

「ホマレ。旅をやめて、一緒に住まないか?」

 突然のことに、オレは何も言えなかった。

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