第二章 パーティー結成
第18話 新パーティー
「とにかく、パーティーを作って、ノア様が魔王を嫌でも倒せるようにすれば良いんだよね?」
数時間ほど、エイレンと話し合った結果、俺とエイレンはそういう結論に辿り着いた。
俺とエイレン、そして、リリアも入れてパーティーを作る。
そして、そのパーティーで魔王を倒せるようにノア様を誘導する。
今の魔王を倒す意欲のないノア様に、なんとか魔王は倒させる方法はこれしかない。
自分で言うのも嫌な話だけど、俺がパーティーで動けば、ノア様も動かざるをえないはずだ。
「そうだな……それしか……ないよなぁ……」
俺は過度な心労を抱えながらも、エイレンの言うことに同意した。
******
──────次の日、冒険者ギルドにて。
「その汚い手を離してください。グレイグさんが汚れてしまいます」
「そうか。嫉妬しておるんじゃな? 心に余裕がないんじゃな?」
ノア様とリリアとの修羅場は、ここ冒険者ギルドの中でも永遠に続いていた。
地獄だ。ここは紛れもなく地獄だ。
冒険者ギルドの隅っこに生成された地獄フィールドだ。
結局、昨日の修羅場から二人の仲は全く改善しなかった。
家に帰っても、ずっと二人は小さな喧嘩を続け、どんな些細なことでも永遠に言い合いを続けていた。
俺はリリアとノア様の間で、どんどんと精神力が削られていくのが分かった。
「───そんなことより、話があるんでしょ? グレイグ」
すると、この地獄の中での唯一の救いであるエイレンがそう話を切り出してくれた。
そうだ。昨日の修羅場で地獄を見てしまったが、まだ唯一の救いはある。
そう、エイレンである。
今、この状況でのエイレンは女神のような存在だった。
「そうなんです! 話があるんですよ!」
俺はエイレンに心から感謝しながら、対面に座っている三人の目を見つめる。
ノア様とリリアは俺の大きな声に少し不思議そうな顔をしていた。
俺はそんな悩みの種である二人を見つめながら、俺はゴクリと息を飲み込む。
「俺とノア様のパーティーに、リリアとエイレンを入れます。そして、俺たちはSSSランクパーティーを目指します!」
俺は緊張しながらも、三人に向かってそう言い放った。
これこそが、エイレンと夜な夜な話し合った結論だった。
「グレイグさん……? パーティーに私以外の女を入れるんですか?」
すると、ノア様は俺の目の前にまで顔を近づけ、低い声でそう言った。
今までに見たことのないノア様の冷たい表情に、俺は酷く動揺してしまう。
怒っているのか、悲しんでいるのか……それとも両方なのか。
ノア様の表情は心の底から冷たくなるような、恐ろしさを孕んでいた。
それでも、俺はこれを乗り越えて行かなければならない。
「はい。そうです。そうした方が……いいと思いました。ノア様のためにも」
俺はそんなノア様の表情に怯えながらも、ノア様に毅然とした態度でそう答えた。
俺はバクバクと鳴り響く鼓動の音を感じながら、ノア様の反応を伺う。
「そう……ですか」
ノア様はかすれた声でそう答えると、そのまま元の席に引き下がった。
リリアもそんなノア様に追い討ちをかけることもなく、俺も都合の良い言葉を思いつけなかった。
そんな状態の冷たい空気が辺りを流れた。
******
「はぁ……」
俺は溜息を吐きながら、冒険者ギルドの掲示板を見つめる。
このままでいいのかな。
このまま、ノア様を無理矢理クエストに連れて行って、それで問題は解決するのかな。
もう既にどこかへ姿を消してしまったノア様のことを考えると、自然と気分が落ち込んでしまう。
俺はどうすれば、良かったのかなぁ……。
俺は掲示板を眺めながら、呆然と考え込む。
「────君、クエストを受けるの?」
すると、俺の背後から親しみやすそうな声が聞こえてくる。
背後を振り返ると、そこにはどこかで見たことがある少女の姿があった。
あ……あれ?
この人って、勇者パーティにいた聖女の人だよな?
確か……名前はアルミラ。
アルミラさんは予言の聖女であり、アニメ勇者転生の中でも非常に重要なキャラだ。
そんなビッグネームが俺に話しかけてきた……。
何かがおかしいと考えるのが自然だろう。
俺はノア様の一件もあってか、少し警戒しながら口を開く。
「そ、そうですけど……な、何の用ですか? アルミラさん」
「いやいや! 待って待って! 私はノアとかエイレンとは違うよ。そんなに警戒しなくても大丈夫だよ」
アルミラさんはブンブンと首を横に振り、真っ向から俺の思考を否定する。
あ、ああ、そうなんだ。
アルミラさんは変な感じじゃないんだ……。
いや、これが普通なんだ。俺がおかしくなってるだけだ。
俺は自分の悲しい変化を嘆く。
「ああ、そうだ。クエスト受けるならさ、私のパーティーと一緒に受けない?」
すると、アルミラさんが不思議な提案をしてきた。
「え……? どうしてですか?」
俺はその理由が気になって、アルミラさんにそう尋ねた。
「うちの戦士が勘違いして悪いことしちゃったみたいだし。まぁ、そのお詫びってことで……」
すると、アルミラさんは少し困ったような表情を見せ、そう言った。
うちの戦士……?
アルミラさんは勇者パーティーの一員だから……戦士ってアレスさんか……。
俺はあまりにも心当たりがありすぎる戦士に、陰鬱な気持ちになってしまう。
あの後、リリアにどこかへ移動させられて、歩いて帰ってきたのかな。
だとしたら、俺に相当な恨みを持ってそうだなぁ……。
い、いやいや、勘違いで襲ってきたのはあっちだし……。
俺の頭の中はアレスさんのことでごちゃごちゃになってしまう。
「アレスさんは、あの後……どんな感じなんですか?」
俺はあまりにアレスさんのことが気になり、そう抽象的に尋ねた。
「うーん、まぁ、会ってみたら分かるんじゃないかな」
アルミラさんはそう言うと、俺の背後をすっと指で指した。
「え……?」
俺が後ろを振り返ると、そこにはいつの間にか、アレスさんが立っていた。
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