第3話

「ごー! よん! さん! にー! いち! あけましておめでとうございます!」

 テレビの中の男性アイドルたちが新年を告げた。ステージ上に大量の紙吹雪が舞う。この番組にも飽きてきたなあと思った私はザッピングし始める。格闘技番組やクイズ番組、お笑い番組までチャンネルを変えたところで電源を消した。

 こたつの上の年越しそばをすすった時、ふとあの少年のことを思い出した。

 最後に少年を目撃してから二週間が過ぎていた。

 あれから転勤の話を悩んで悩んで悩み抜いて承諾して、こんなに悩むくらいならすぐ決めたら良かったと後悔しながら転勤の諸々の準備をした。帰ってから食べて寝て起きてをひたすら繰り返した二週間で、一秒たりとも少年のことを思いださせてくれない慌ただしさだった。

 大阪に出発するまであと一ヶ月余り。次に広場に行って少年と話せなければもう諦めよう。どのみち引き継ぎの仕事もたんまりあって、もうあと一回くらいしか行けないだろうし。

 私はそう決断をしたが、こたつから出る決断をくだすのはそこから三十分後のことだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る