第18話 黒蜜の考え
もやもやする。
人間関係ってこうも難しいものだったけとふと思った。
特に白花とはもっと仲良くなりたい。そのためにはどうすればいいのか、考えれば考えるほど、遠回りをしているような気分だ。
以前の私はもう少し、上手く人付き合い出来ていた。だが、最近は白花と一緒にいたい。白花に嫌われたくない。白花を喜ばせたい…と白花中心に考えている。こんなに人について考えたことなどなかった。沼にハマってそのままズブズブとそこまで沈んでいくような…感じ。前はもっとあっさりとした付き合いで満足していた。今はとにかく白花中心だ。周りが見えていないとも言えるだろう。
周り…か。
部屋を見回す。
ここは母の実家。そして母の部屋だ。部屋はきれいに片付いており、物はない。あるのはベッドと机位なものだ。ミニマリストのような部屋を見て溜息をつく。
―――ここは私の部屋ではない。
祖父母は私を歓迎した。私が必死に探した連絡先に祖父母がいて快く引き入れてくれた。部屋も自分の好きなように使っていいよなんて言ってくれたが…好き勝手に使う気分にはなれなかった。
スマホで近場の賃貸アパートを探してみる。
なかなかい物件がない。そして一人暮らしをするには18歳以上でなければならないようだ。あまり人に迷惑をかけたくない。
「はっちゃん。学校行かないの?」
遠くから祖母の声がする。時計を見るといつもなら登校時間だが、今日は行く気になれなかった。行ったところで白花とはなかなか会えないし…。
「今日は休むー」といって再びスマホに集中する。
登校しようと一応制服だったのだが…まぁ、今日は文化祭初日だし、休んでもバレまい。
しかし、18までなんとかお金を稼ぐ方法を考えないとなぁ…。
お金かぁ。順当にいくと多分私は高卒で就職かな。今は大学に入るような余裕もない。きっと祖父母は私を甘やかすかもしれないが…そういうわけにはいかない。それに大学に行ってまでしたいことは今はない。大学はいつでも入れるのだし…高卒で就職が今の私のベスト判断なのだろう。
だが、白花はどうだろう。
私と白花は思いはきっと同じだ。
でも考えまで同じじゃない。
きっと進学なんだろうな。
そうなるとどうなるんだろう。
離れて…疎遠になるのかな。
すでに中学の頃に連絡先を交換した数名とはなんの音沙汰もない。このまま連絡なしで知り合いから他人へと変化していくのだろう。
そこに白花が加わる? いやそれはない。だが、疎遠になってなかなか会えないとかはありそうだ。
一緒にいたい。ずっと近くにいたいよ。
どうすればいいんだろう。
そこで白花の声が頭の果で再生する。
…いつか、二人で暮らす
…。
いいな。
想像できる。一つの部屋に私と白花がいる空間。
それはどれほど幸せな空間か、考えただけで心が温かくなる。
想像しただけでもやもやが晴れて落ち着く。
ぼんやりと好き…から明確に好きになったのは今この瞬間なのだろう。
白花と二人で同棲するところを想像して、私はああ、こうなりたいと思った。それが全てだ。白花と長く一緒にいたい。
そのためにどうすべきか…。
いや。もう一つだ。白花と付き合うのだ。
×××
付き合う。そのためには告白をする。
私は依然のファミレスで保留にしたことを公開していた。
あれはきっと白花も残念な気持ちでいたのだろう。
今にして思うあの微妙な顔はただ単にがっかりした顔だ。
何が微妙な顔か。ただ現実から目を背いていただけだ。
好き…か。
うん。好きだ。白花のことは好きだ。
あの日は確かに勢いだったかもだが、今も変わらず白花を好いている。
ただどう伝えればいいのだろうか。
諸君らは告白というものをしたことがあるのだろうか。私はない。つまりどう伝えればいいのか分からないということだ。だが、願望はある。
雪の日。頭に雪が積もって顔が寒さで真っ赤なんだ。それで一生懸命告白する…うんそうだな、踏切越しとかいいな。そうそうそれで寒さで真っ赤なんだけど走ってきたから息が上がってるんだよ。それで息が白くて…その中で好きっていうんだ。んで答えがくる前に電車が通って数秒。電車が通った後に手で大きく丸を作る告白された人…こういう…願望がねあるんだけど…。
――――冷静になろう。
その日の夜。私は悩みまくったあげくたどり着く。
付き合おうって言えばいいのではないか?
長考の結果、頭がオーバーフローし、そのまま睡眠。
二日目の私…ガンバレ。
×××
文化祭二日目。
私は告白した。
頭の中でシミュレーションした通りにはならなかったがそれでも結果は恋人に成れた。
「あの時は保留とか言ってごめん。」私がそう言うと
「ううん。大丈夫。こうなると思ってた。」白花がそういった。
あの日の自分を思い出すと単純に自信がなかっただけなんだろうな。
そう思う。
その日はそのまま二人で文化祭を回った。そしてそのまま帰宅した。
えっと思うかもだが、正直告白で精一杯だ。それ以上は明日の私に任せる。
今日の私は頑張った。
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