第10話 白花、長考する

すったもんだの末、黒蜜さんは親戚の家へ引越しした。

…。

ここ最近おかしいのだが、黒蜜さんのことを考えると妙に顔が赤くなる。

いや、分かっている。あの日の公園での会話が私をそうさせるのだ。

だが、同時になんとなく分かってしまった。

一緒にいたい。


それはもう…好きってことじゃないか?


いや、違う。だがしかし、…可能性として…。

うーん。というような文言を頭の中で数回繰り返したのちに考えを放棄する。というパターンに入っている。

朝早く起きる習慣がついてしまっていたので、早起きした後に考える時間が増えてしまって、こういう無駄に頭を動かす時間が増えた。もっと睡眠をとろう。

しかし、黒蜜さんの家にはもう行かないのはなんというか寂しさがある。

…。黒蜜さんちかぁ。

実はあの公園での帰り際に黒蜜さんが「通い妻みたいでよかったのになぁ…もう見られないのか。」なんて言ってきた。

…。いやいや。そんなに通い妻感あったかな。

それはなに? プラスに捉えればいいのか?

いや、どうだろう。だが、うん。しかし…。


…。


私…どうした。


×××


夏休みに入ってそうそう引越しをした黒蜜さんとは毎日会っていた。

あの公園での会話以降、より仲が深まったようで連絡先も交換して、互いの距離が一気に近くなった。

作戦のことを気にせず話せるのはとても気持ちがよくて、一層仲良く慣れそうな気がした。


私の心の枷が外れたかのように思えたが、まだ突っかかりがあるのも事実。要は、好きって感情が果たしてどこまでの好きなのかが…自分自身の中で整理がついていない。…いや、分かっているんだが、答えを出すには早すぎる気がする。もっと考えてから答えをだすべきだ。

果たして私の黒蜜さんへの思いはライクなのかラブなのか。

そこが引っかかって黒蜜さんを思う気持ちに少々枷を付けている。外すと…自分でもどうなるか分からない。


ここ最近の私の感情があやふやなのは紛れもなく黒蜜さんが影響している。

黒蜜さんと朝食を一緒に食べている間に仲良くなった証でもあるのだが、少々気持ちが入りすぎている。気を引き締めないと長考に入ってしまう。


夏休みに入ってすぐの深夜。

あの日、公園からの帰り道に交換しようと連絡先を好感した黒蜜さんからメッセージが来る。

『ヤッホー。』

「どうも。」

『今、電話してもいいかな。』

え? と戸惑いながらも「いいですよ。」と打つ。するとすぐにスマホが鳴る。


「やっほー。二回目www」

「ふふ。こんな時間にどうしたの?」と私。

「うーん。夏休み、どうしようかなって思って。」

「どうしようってのは…?」

「だから、二人でいろいろ遊びに行きたいなってこと。」

「あ、ああ。そうか。そうだね。どうしよう。」

「定番はプールや海。山に川。バーベキュー、夏祭り…肝試し、それから…」

「買い物とかもしたい。今まで黒蜜さんとはなかなか遊べてなかったし。」

「そうか。そうだね。普段の遊びもしよう。そうだよ。私引き籠ってたからそういうことしてなかったんだwww」


楽しい。

黒蜜さんとの会話がこの上なく楽しい。

でも、どこか釈然としない。


「じゃあさ、この夏に向けてスケジュールつけようよ。結構宿題も出てるしさ。二人でいろいろ考えながらさ。」

「いいですね。どこで…。」

「どこにしようか…。」

うーんと考える二人。と、黒蜜さんが何か思いついたようで「ああ」と声を上げる。


「白花の家に行ってみたい!」


予想外の言葉だった。

驚きよりも先に喜びが勝った。


黒蜜さんがうちに来る!?







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